国内女子ツアー前半戦最終戦となる「アース・モンダミンカップ」は、2日目に首位に立った成田美寿々がそのまま逃げ切り今季2勝目、そして節目となる通算10勝目で幕を閉じた。最後まで攻撃の手を緩めなかった渾身の逃げ切り勝ちを、上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が語る。
【写真】青木瀬令奈と宝塚風のポーズをとる“遊び心”も
■クロスハンドにしたことで悪癖が改善 “遊び心”がハマった部分も
「アース・モンダミンカップ」は梅雨の時季に行われることが多い。今年も例外ではなく、初日、そして決勝ラウンドの2日間は雨の中でのプレーが求められた。その分、グリーンは重たくなっていた。これがかなり勝負に影響したと辻村氏は語る
「かなり湿っていて、ショートアイアン以下の番手で打つ場合、ほとんどの選手がスピンがかかり戻ってくるようなグリーンでした。手前から、というよりは奥からスピンで戻してくるというマネジメントが求められる。こういったコンディションは女子ツアーではあまりない」。これが成田に追い風になったと続ける。
「成田さんはアグレッシブに攻めるタイプで、ピンに突っ込んでいくのはお手の物。また、成田さんの基本的な持ち球はドローですが、フェードや抑えた球も打ち分けられる。そして普段からスピンコントロールをいろいろ試しているなど“遊び心”があるタイプ。だからこういった特殊な状況にもスムーズに対応できたのでしょう」
いざグリーンに乗せてからのパッティングは優勝した「宮里藍 サントリーレディス」から取り組んでいるクロスハンドが奏功していると辻村氏。
「この握り方が成田さんの悪い癖を封じてくれていますね。成田さんの悪いときは、“強く打とう、届かせよう”として手打ちになってしまい、パンチが入ってしまうこと。それがクロスハンドにすることで手元が動かなくなりアドレスのかたちが最後まで崩れていません。肩でストロークできています。だから自分の思ったスピードで打ち出せる。つまり雨の重たいグリーンでも自分の思った通りに打てるということ」。名手鈴木愛や申ジエ(韓国)が30パットする中、成田は4日間通じてパッティングが30を超えた日はなし。22個のバーディを量産するのにどれだけ後押ししたかは言うまでもない。
■1ヶ月で2勝の成田美寿々&前半戦4勝の鈴木愛 二人に共通する、勝ちきる秘訣
一方、その成田に3打及ばず2位となったのが昨年覇者の鈴木愛。初日に79位タイと出遅れたことが響いた。「初日パターが入らなくてパープレーとなってしまいましたが、最後には優勝争いに絡んでいる。これは自力があるということ。“普通”ができれば優勝に限りなく近い位置にいけるということです」(辻村氏)。
この1位と2位に共通するのが“調子がいいときに勝てている”ということ。「前半戦好調をキープできている」と話す鈴木。そして6月に2勝を挙げるなど目下絶好調の成田。勝ちきる強さがこの二人にはあると辻村氏は言う。
「二人は本当にショットもパットも調子がいい。それは成績が物語っていて、パーオン率の順位と平均パット数(パーオンホール)の順位の合計がこの二人だけ1桁なんです。でも、好調なときでも勝てない人はいます。では、なぜ二人が勝てるかというと、攻め切れているから。守りに入っていてはどんなに調子が良くても勝てません。また、差がついたからといって安心してしまっては絶対にスキが生まれる。だからこその“攻め続ける”なのです」。
事実、成田は2打差をつけて最終日を迎えたが、「周りとの差は考えず、トータル20アンダーまで伸ばす」とひたすらに攻撃的なゴルフを展開。バッグを担いだ森本真祐キャディも「油断させないように」と成田を叱咤激励。「リードを気にして伸ばさないのはかっこ悪い」という成田らしい矜持(きょうじ)をウイニングパットが入るまで貫いた。この気持ちが圧勝劇につながった。
「あとは如何に調子を持続するかですね。この調子を中盤、後半まで維持することができれば、成田さんにも賞金女王の目が出てくると思います。今大会のように大きい大会を獲れたことで鈴木さんの独走を許さなかった。どの大会でも頑張るのは当然ですが、こういった大きい大会をものにすることも女王になるには大事な要素の1つですからね」(辻村氏)。
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、比嘉真美子、藤崎莉歩、小祝さくらなどを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。
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