国内女子ツアーも後半戦が幕を開けた。前半戦の成績でリランキングにかけられ、出場権を得た者、失った者とさまざまだ。新たに出場権を獲得した注目選手のスイングを上田桃子や比嘉真美子らを指導する辻村明志コーチに分析してもらった。
【連続写真】豪快かつしなやか 原英莉花のドライバースイング
原英莉花さんのスイングは、ハッキリいって穴がありません。ゴルフスタイルも攻めの姿勢ですが、スイングもダイナミックで豪快さが持ち味です。
まず姿勢がきれいです。アドレスからフィニッシュまで一貫して姿勢が崩れないのが特長です。体の軸ブレもほとんどありません。長身の女子選手に多いのが、長い手足のため、手が体からはずれやすく、軸がぶれてしまうこと。原さんは173センチとかなり長身ですが、軸はまったく傾いていません。ダイナミックでこれだけブレなければ、強い球が打てるのも納得です。
アドレスから見ていくと、高い身長なりの理想のスタンス幅で揺らぎがありません。グリップもクセがなく、左手が少しウィークなのに対し、右手はスクエア。これも豪快なスイングには理想とされる形です。
姿勢が良く、安定したアドレスからテークバック、バックスイングに入るわけですが、注目は両腕の長さが変わらないことです。手元が肩の高さまで上がった段階でも、アドレスでの両腕の長さは変わりません。両肩と腕で作る三角形が変わらずに上がっています。さらに、トップスイングまでに体重は右サイドに乗りますが、決して軸がズレるわけではなく、体の内側に収まっているので、パワーロスもありません。
そのパワーが生まれるのには大きな理由があります。それは、クラブを手であげていないこと。左肩がアゴの下まで、100度も回っているのに、クラブはまだ耳の高さにあります。手元が高く上がっているのに肩が回っていない人は、パワーの効率が悪く、原さんとは正反対といえます。
トップスイングも非常にコンパクトですが、ここで十分にパワーがたまっています。ここからダウンスイングに入るわけですが、ここでもいくつか素晴らしい動きを見せています。まず1つめですが、ダウンスイングへの切り返しは足からスタートしています。原さんのトップスイングを見ると、肩は十分に回っているのに、腰は半分、そしてヒザはほとんど動いていません。この動きが小さい部分には1番パワーがたまるので、下から徐々に動かすことによって、たまったパワーがどんどんスイングを加速させます。
2つめの動きとして、トップスイングでの腕とクラブの角度がダウンスイングの中盤まで保たれている点です。手元が腰の高さにあるときでも、腕とクラブの角度が変わりません。さらには、この段階でも上半身は右を向いたままで左に開くことがありません。左肩も右肩と同じ高さのため、振り遅れもありません。この動きはテレサ・ルー(台湾)やイ・ミニョン(韓国)と同じです。この腕とクラブの角度を極限まで保つために、インパクトまで手元が浮くことがありません。
この角度を保つことによって、いわゆる“ため”ができています。ダウンスイングでは手元と体の距離が近く、なるべくクラブが下りてくる時間を長くし、インパクト後に一気に解放しています。フォロースルーで手元が腰の高さに来たときのクラブヘッドと体の距離が最大になっています。このクラブヘッドが描く、ダウンでは小さく、フォローでは大きくという円軌道が、最大限パワーを使える動きなんです。
フィニッシュも見事な形です。左足から左ヒザ、股関節から首まで、1本の軸ができています。100パーセントの力で振っているのにこのフィニッシュがとれるというところが、ダイナミックでありながら、しなやかさも備わっている証拠です。終始、姿勢が崩れない、素晴らしいスイングといえるでしょう。
スイングについての完成度は高いですが、今後はパワーとともにボールコントロールを磨けばさらに結果を残しそうです。具体的には、ショートアイアンや短い番手で、縦の距離感を合わせること。ゴルフで重要なのは、縦、つまり距離をコントロールすることです。これができればピンに絡んでチャンスが増えますので、より活躍が期待できるでしょう。
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアンツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアンツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、比嘉真美子、藤崎莉歩、小祝さくらなどを指導。上田の出場試合に帯同、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに生かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。
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