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早くも19勝目を挙げたD・ジョンソンの強さの秘密【舩越園子コラム】

＜RBCカナディアン・オープン 最終日◇29日◇グレン・アビーGC（7,253ヤード・パー72）＞
「RBCカナディアン・オープン」を制したのは、ダスティン・ジョンソン（米国）だった。
【関連動画】世界NO.1ジョンソンが貫禄の勝利　最終日ハイライト
今季3勝目、米ツアー19勝目を挙げたジョンソン。層が厚い米ツアーで年間3勝以上を挙げるのは至難の業。それを3年連続でやってのけたのはタイガー・ウッズ（米国）以来の快挙だが、さらに驚かされたのは彼の素早い立ち直りぶりだ。
2016年の「全米オープン」を制し、さらなるメジャータイトル獲得を目指しているジョンソン。今年は「マスターズ」で10位タイ、全米オープンで3位と勝利に迫ったが、先週の「全英オープン」では初日に出遅れて予選落ちを喫した。世界ナンバー1がわずか2日間でカーヌスティから去ったことは、誰にとっても予想外の出来事だった。
ジョンソンの予選落ちは今季13試合目にして初めてだった。そして、昨年6月以来、実に21試合目でついに喫した予選落ちでもあった。
もちろん、ジョンソン自身にとっても、それはショッキングな出来事だった。だが、そこですぐさま気持ちを切り替え、次戦に挑み、そして結果を出す。その精神的な強さこそが、彼を世界一に押し上げた由縁なのだろう。
カナディアン・オープンのタイトルスポンサーはジョンソンの契約先であるRBC（ロイヤル・バンク・オブ・カナダ）。つまり、ジョンソンは大会ホストとしての役割も担っていた。
さらに言えば、婚約者のポーリナ・グレツキーの父親、ウエイン・グレツキーはカナダが誇る「アイスホッケーの神様」だ。そのカナダで好プレーを披露し、勝利を飾ることには大きな意味があった。
もちろん、婚約者やその父親、スポンサーのためのみならず、ジョンソン本人にとっても、この大会は重要な位置づけにあった。
今後に続く世界選手権シリーズの「WGC-ブリヂストン招待」、海外メジャー「全米プロゴルフ選手権」へ、その後に待ち受けるプレーオフ4試合へと調子を上げて進んでいくためには、このカナディアン・オープンで全英オープン予選落ちのショックからしっかり立ち直り、流れを変える必要があった。
そうすることで、世界ナンバー1の地位とフェデックスカップ1位の地位を死守し、まだ1度も輝いたことのないフェデックスカップ年間王者の座も狙っていく。ジョンソンは、そんな野望を胸に抱いている。
すべては、今週のカナダでどんな戦いができるかにかかっていた。
「ショットは、とてもいいが、このところパットはいいときと悪いときの差がある。カーヌスティ後は、パットを重点的に練習した」
それが功を奏し、3日目の「65」で首位タイへ浮上。
「明日、とても爆発的なスコアを出す選手がいるだろう。それが僕であることを望む」
その言葉通り、最終日のジョンソンは雷雨中断をモノともせず、「66」の好スコアで回り、2位に3打差で見事な勝利を飾った。
72ホール目。ドライバーで放った第1打もピン3mをピタリと捉えたウェッジの第2打も、完璧なショットだった。
戦いの舞台だったグレン・アビーGCの大観衆は、いつしか「レッツゴー・DJ！レッツゴー・DJ！」を連呼していた。
かつては、メジャー大会の最後の最後に勝利を逃がしたり、原因不明の米ツアー長期欠場でいろんな噂が流れたジョンソン。全米オープンを制したときでさえ、ルール上の珍事に巻き込まれ、昨年はマスターズ開幕前日に階段から転落して腰を強打し、無念の棄権。
本当に波乱万丈のゴルフ人生を生きるジョンソンだが、黙々と練習し、着々と勝利を挙げていく姿に、人々は共感し、エールを送る。
勝因を問われたジョンソンの返答は「練習とみなさんのサポート」だけで、そっけなかった。ボキャブラリーが少ないジョンソンは、言葉ではなくゴルフですべてを語る。
「レッツゴー、DJ！」の連呼は、シーズンエンドへ向かい、世界へと広がっていくに違いない。
文・舩越園子（在米ゴルフジャーナリスト）
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