このたびゴルフパートナー全店で2017年上半期に売れたクラブを一挙発表!
それだけではなく、ゴルフパートナーの商品バイヤー近藤、ゴルフジャーナリスト小林一人氏、プロゴルファー今野一哉氏からなる特命調査チームを結成し、ランキング上位のクラブを試打することによって、売れている理由やマーケットの動向などを探っていこうというこの企画。まずはドライバー編!
さて、今年も残すところあと3ヶ月。2017年の総決算のクラブオブザイヤーに輝くモデルはこの中にあるのか?!
近藤 ダントツに売れたのはネクスジェン6だったんですが、これはひとまず置いておいて、テーラーメイドのM2が新旧モデルともランキング入りしたのが特徴的です。
小林 2017モデルは難しいと言われていて、シニアプロや女子プロはグローレを使っているらしいですね。それでも3位に入ったのは商品としての魅力があるからだと思います。実際私も使っているんですが、打っていて楽しいんです。つかまらず右にフカすことも多いんですが、それでも使いたくなる不思議な魅力を持ったモデルだと思います。
近藤 M2に関して言うと、2年前ぐらいの時期は量販店の人たちが「音が悪い」ってしきりに言っていましたけど、今年は誰も言わなくなりましたね。エピックが出てきて、カーボンコンポジットが2モデルになったことで違和感がなくなったんでしょう。
小林 打音は新旧モデルとも低めですね。自分としては「カキーン」という高い音より「カチッ」っという低い音が好きなので、それも使いたくなる理由かもしれません。重心距離が長くて、バックスイングで暴れる傾向は確かにあるんですが、制御できればその重心距離を生かして飛ばせるモデルだと思います。
近藤 僕はスライスしか出ませんね。スピン量もけっこう入ってしまいます。
小林 近藤さんはアウトから鋭角に入れるんでスピン量は多くなりますよね。スイングにつかまる要素が少ない人は使えないと思います。
今野 挙動に関していうと、僕には違和感だらけです。2位のエピックもそうなんですけど、ソール形状から来る性能とクラウン形状から来る性能が意外と真逆だったりするんですね。最近のドライバーを見ていると、性能をソール部分で出してクラウン部分で嫌みのない形状のイメージを与えるっていう手法が目立ちます。僕はそれを「ギミック」と呼んでいますけど、そういうものが多く出ているのかなと。特にM2なんかは前モデルからそうですけど、顕著に出ている気がします。たとえばソールのフェース近くがえぐれていたりして、本当はクラブ自体は手前にあるような状態なんですよね。だけど上に白い樹脂をかぶせてあるから。投影面積的には先端まで来ているようなボリュームがあるように見えるから安心感がある。ただ僕は上(クラウン)の印象で弾道をイメージするんで、それを下(ソール)が裏切ってきたりすると、長い目で見ると嫌な印象を受けてしまいます。どっちを信じていいかどうかわからなくなるんですね。
小林 自分は無頓着なのか、全然気になりませんけど、プロレベルだと大事なことなんでしょうね。
今野 あとソール角の影響は大きくて、これは置いたときにけっこう右を向くんですよね。2016年あたりのモデルから多いんですけど、地面に置くと右を向くし浮かせて構えるとまっすぐ向いている。となると、どっちを信用していいかわからなくなりますよね。浮かせて構える人にとっては悪い印象はないんですけど、置く人には不安感が出て、迷いながらテークバックに入っちゃう人もいるんじゃないでしょうか。あと海外ブランドに多いんですが、クラウン部分のデザインを白黒にしてみたりとか、コントラスト変えてみたりとか、そのおかげでターゲットラインに立ちやすいなどという補助効果があるのも確かなんですが、昔からやっているゴルファーの中にはクラウン部分に飾りがあるのを嫌ったりする人も多い。果たしてこれを進化と呼ぶのか…自分には何ともいえないですね。
小林 僕みたいにクラブに合わせることを面白みだと思うか、それとも自分の感覚に合ったクラブを探すかの違いでしょうね。
近藤 次は上半期の売り上げ2位のGBBエピックスターについての評価を聞きたいと思います。僕自身の印象はというと、M2よりは全然つかまりますね。とはいえデータ的にはスピン量が多くて、自分のスイングには合っていないようです。
今野 これに関しては発売前から売れてたみたいなところがありますね。話題性で。昔のタイトリストの2タイプ的な考え方でいうと、ハードヒッター向けのほうがウケていたんですが、いまはサブゼロではなくスターが売れるというのはマーケットの変化ですね。最近はタイトリストのD2を使うプレーヤーが増えてきましたし、こういうやさしめのものにランクダウンさせながらも、それで格好がつくという風になってきたのだと思います。
小林 カーボンコンポジットの打感が好きで、私のように「M2だとちょっとつかまらないな」というゴルファーが触手を伸ばしているんだと思います。私自身はM2の扱い方が大分わかってきたので今回M2とエピックスターはほぼ同じデータでしたが、一般的な日本人ゴルファーにどちらが合うかと言われればエピックでしょうね。
今野 浮力が足りなくて打ち出し角が低いと自分で補正したくなります。上げにいくためスライス側に誘導される傾向があると思うんですけど、サブゼロはヘッドスピード50m/s以上じゃないと浮力が確保できないので、それが顕著です。そこでスターに落としどころがある、ということじゃないですか。
近藤 メーカーはゼクシオに対抗したいと考えているようですが、それはちょっと無理があるかなという感じですね。ではそろそろネクスジェンの話をしましょうか。
小林 シャフトが1フレックスで誰にでもハマるという不思議なクラブですけど、今回改めて打ってみて、クラブに任せなきゃダメだなという印象を受けました。叩きにいくとちょっと球がねじれるんで、何もしない感じで振ってあげたら初速が速くて打ち出しが高いという理想的なデータが出ました。 これでフックフェースでなければ最高ですよ。
今野 振り心地がいいし、僕も初速が一番出ている気がします。ヘッドスピードはこれより出るものもあるのでエネルギー効率がいいということですね。強振しても変な感じがしなかったし、しなりのバランスがいいのかな。音は高めで練習場で打ったときに印象が凄くいいですね。低ヘッドスピード帯の人が打っても高い音がするから気持ちが良くて、その音に耳で慣れていってハードヒッターに誘導してくれるような印象があります。
近藤 自社ブランドなので実はあまり打ち込んだことがなかったんですが、確かに振りやすいですよね。ヘッドスピードが頑張らなくても出るし、スピン量も抑えられています。
小林 左への棒球が出てますから、近藤さんには合ってるんじゃないですか。しかしタイプの違う3人すべてに良いデータが出るんですから、やっぱり凄いクラブですよ。シャフトの効果ですかね。
近藤 手元が軟らかいダブルキックポイント的な雰囲気のシャフトなんです。
今野 塗装の仕方もよく考えられていて、上から見たときの塗装のエッジを基準にスクエアに構えると、ヘッドがちょっとかぶるんですよね。つまり、嫌みなく左にフェースを向けられるということだし、ロフトの割にはフェースが広く見えることで安心感も出ています。初心者はどこで打ったらいいのかイメージが湧きにくいので、「ここだよ」と教えてくれている感じがして、打点の意識を育てるうえでも有効なんじゃないかな。
近藤 初心者がターゲットのユーラスもランクインしています。あまり打つ機会はないと思いますが。どうでしたか?
小林 物凄く左を向いてますよね。ここまでフックフェースだと余計なことをしてしまうので自分には打てませんでした。どうしても逃がしたくなるんですよ。
今野 小林さん運動神経いいですね。それって防衛本能ですよね。こういうクラブはひと工夫必要で、上でワンテンポ待って、シャフトが返ってきてから落とすと上手く打てます。何もしないとチーピン気味の球が出やすいし、切り返しでぐにゃっと来る違和感があるので、うわっ気持ち悪い!と思ったまま下ろすと右にすっぽ抜けてしまいます。
近藤 僕が打つと弾道がちょうどいい高さでしたね。基本上がり過ぎるので、これぐらいの中弾道で飛んでくれると嬉しいんですよ。またいままで打った中ではシャフトがいちばん粘る感じでした。
今野 ヘッドがすごく動く感じがするのが特徴的ですね。バランスがきてないのにこれだけ動くということは、何かシャフトがやってるんじゃないかと推測できます。ビギナーは長いと先端を意識できなくなるから、こういうヘッドを意識できるクラブはいいんじゃないでしょうか。ヘッドに振られながらヘッドを振る感覚を養う、という意図を持ちながら使えばいいと思います。
近藤 ベスト5には入っていないものの、注目モデルとしてプロギアのRSを打っていただきましたがこちらはどうでしょう。
今野 前作がギリギリアウトだったやつですね(笑)。
小林 フックフェースなんで反応出ちゃいますね。
近藤 では僕の感想を言うと、ヘッドが縦長でというイマドキには珍しい形状で、フェースが小さく見えます。自分はスライサーなんですけど、つかまりがいいというコンセプトで造られたこっち系は苦手なんですよ。むしろ小振りなRS-Fなんかのほうが返ってくるイメージがあります。
今野 逆に操作性がよくなるから返しやすいということですね。レスポンスがいいんでしょうね。シャフトの性能なのか、ヘッドの重量なのかわかりませんけど、ヘッドの存在感すごくありません?そのぶん自分で振るというより、ヘッドに任せてポーンとやればいい安心感があります。
小林 RS-Fは明らかに左へのミスが少ないわけですから、棲み分けはきっちりできていますよね。そういう意味では評価できます。
今野 プロギアは国内ブランドとしては攻めますよね。最近じゃ珍しい三角形のヘッドで、芯を食ったときのエネルギー効率がすごくいいです。ただオフセンターヒットに強いかというと、そこまでではなく、それが気持ち悪いという人がいるかもしれない。ソールで性能を出しているタイプのドライバーだと思いますが、それでいて座りを確保しているのが上手いですね。ヒール寄りで置きたくなるのでアップライトにはならずハンドダウン気味になるので、自然につかまってくるんじゃないかな。こういう細かいワザを入れて来るのがプロギアの面白さでしょう。
近藤 最後はスリクソンZ565です。海外で人気のクラブ評価ディアの「マイゴルフスパイ」で人気ナンバーワンだったので今回のラインアップに加えてみました。ちなみに僕は短くて打ちやすかったです。
今野 クラウンに何もデザインがないですね。ソールにもそう大きな性能を与えている感じでもなく、ヒール側に重心を持ってきているかというとそうでもない。そしてフェースアングルも置いたまんま。何も癖がありません。こういう「何もしない」ヘッドはいまはほとんどないですから、すぐこの世界に入って来れる人は最高でしょうね。
小林 イマドキのデザイン過多なヘッドに慣れている自分には違和感がありますね。ちょっと物足りないというか、パフォーマンス的には十分なんですか、コースに持っていきたい!というワクワク感みたいなものを感じません。
今野 真面目に造り過ぎているからつまらない、ということですよね。確かにデザイン性の高いモデルがずらっと並ぶなかでは弱い。でもこれを振ったら絶対に気持ちいいはずなんです。いまさらこれが何なの?という感じではありますが、シャフトなシンプルな中調子で全体的に癖がないクラブ。柔らかい打球音も気持ち良くて僕は好きです。小林さんと真逆で、イマドキのクラブは癖がありすぎるから僕は使えないんです。
小林 ドライバーは好みがはっきり出ますよね。近藤さんは軌道のデメリットを補正してくれるということが重要みたいですし、今野さんは視覚から入ってくるイメージを裏切らないということを重視しているように思えます。それに対して私はモノとしての面白さを求めていて、極端な話、結果よりも打っていて楽しいかどうかを気にします。おそらくマーケットもこういう様々なニーズがある中でランキングが決定されるので、統一感みたいなものはないんでしょうね。
<2017年上半期 人気モデルランキング>
1位 ネクスジェン6 ネクスジェン(※ゴルフパートナー独占販売クラブ)
2位 GBB エピックスター キャロウェイゴルフ
3位 M2ドライバー(2017年モデル) テーラーメイド
4位 ユーラスドライバー ミズノ
5位 M2ドライバー(2016年モデル) テーラーメイド