29日(火)、東京都千代田区にあるスポーツウェアメーカー「ブラックアンドホワイトスポーツウェア株式会社」本社で行われた展示会に、今月23日に日本プロゴルフ殿堂入りが発表された森口祐子が来場。ALBA.Netの単独インタビューに応じた。ツアー41勝を誇り、永久シード保持者でもある森口は、ここで女子ツアーの放映権問題や、より魅力のあるツアーにするための選手の心得について持論を展開。その様子を2回にわたりお届けする。
3ツアー開催を発表した小林浩美【写真】
日本女子プロゴルフ協会(LPGA)から、昨年中止が発表された3大会(KKT杯バンテリンレディス、中京テレビ・ブリヂストンレディス、ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン)の“逆転復活開催”が発表されてから4日。これまで所在があいまいだった放映権の帰属をLPGAが求めたことに端を発した問題は、テレビ局側からの「交渉の継続」という条件付きながら一旦沈静することとなった。
この様子を見てきた森口は、「(放映権を協会が取得することについて)私は賛成の立場でも反対の立場でもない」と前置きをしたうえで、自らの考えを口にした。
「(今回の放映権問題については)時代の変化とともに協会が考えることだし、選手が協会の動きに対して関心を持つのは当たり前のこと。私は『会長がやり切る覚悟を固め、そしてやり切ったな』という感想を抱きました。あえて意見を挟むのであれば、(小林浩美)会長には会長の悩みがあって、その悩みはずっとやってきている人間じゃないと分からないこともたくさんあったと思う」
協会の対応、それに対する選手たちのリアクションについて森口はこう総じた。協会と大会主催者との放映権を巡る交渉は、「守秘性」という言葉のもと、外部はもちろん、協会に属する選手にも多くが語られることはなかった。それゆえ、昨年末に一部大会の中止が発表されると、多くの選手が寝耳に水といった反応を示した。
さらに大会の継続が決定した後も、中京テレビ・ブリヂストンレディスを主催する中京テレビが「大会をめぐっては、協議中であると認識している中、今年のツアー日程が発表された際に、中止となっていました。一方的に発表されたことを大変残念に思っておりました」という旨のコメントを発表。もちろん申込みの締め切りはしっかり主催者側に提示されており、その範ちゅうでくだされた決断ではあったが、LPGA側の“強行突破”があったこともこのコメントからうかがえる。
こういったやり方について、森口はこう意見を述べる。
「今回の一連の話を、スポーツ界という大きな枠組みで俯瞰した時に、『やり切ったね』という意見も多く耳にしました。でもゴルフ界に身を置く者として、また私の年齢から言うと、筋の通し方、やり方が日本的ではなかったかなとも思います。これは会長一人がどうというわけではなく、ゴルフ界全体の課題として残るのではないでしょうか」
小林会長は、大会中止が覆ったことを発表した日、「再交渉の結果、主催者様と放映権の考え方について合意することができ大変嬉しい。全ての主催者様がトーナメント中継映像における選手の肖像の価値を認めてくださったことは大変意義のある、画期的なこと」というコメントを発表した。しかし、放映権の協会への帰属に強い拒否反応を示していた日テレと系列3局は、「放映権の交渉は2020年以降に粘り強く続けていく」という考えを強調し続けている。
中止発表までの経緯や、継続発表後に発した見解の“食い違い”を見ると、事前の根回し不足や、根本的な解決まで至っていないのは明白。それだけに森口が発した「日本的ではない」という意見は、核心をつく言葉の一つかもしれない。だが一方で、今回の問題が起こったことで、森口はこんな思いも抱いた。
「この件によって、選手達が色々な事に関心を持ったことは“ありがたいこと”だと思わないといけない。トーナメントの成り立ち方を学ぶチャンスになったし、決して悪いことではなかったと思う」
2020年以降のトーナメント開催については、不透明な部分を残すことになったが、結果的に、2019年の女子ツアーは過去最高となる39試合の開催、賞金総額は39億4500万と7年連続で最高額を更新した。だがそれ以上に、この一件は選手にとって“意義深い”問題提起の機会になったのかもしれない。
<ゴルフ情報ALBA.Net>