今季のメジャー初戦となった「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」。黄金世代の一人で、ルーキー・渋野日向子の優勝で幕を閉じた大会で、上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が気になった選手をピックアップ!
“強敵”と書いて“友”と読む? 渋野&ソンウの2ショット【写真】
■高精度のショットが「曲がらない」
最後まで渋野と優勝を争ったペ・ソンウ(韓国)。昨季の韓国ツアー賞金ランキング2位になった実力者について辻村氏は、「本当にショットが曲がらないですね。李知姫、全美貞、イ・ボミ、キム・ハヌルの系譜をつぐ選手。単年登録制度が変わる前の最後の刺客といえるでしょう」。日本ツアーで成功した韓国選手を同列に並べ、高く評価する。今季のパーオン率は70.60%で8位。優秀なショットメーカーを輩出し続ける韓国選手の例にもれず、繰り出されるショットは高精度だ。
「韓国選手の特徴としてフェースをシャットに使わないという共通点がありますが、ペ・ソンウさんもやはり同じ。真っ直ぐ飛ばすことが最優先で、ボールに対してスクエアにヘッドが向かっていく。オープン気味のフェースコントロールが徹底されていますね」
飛球線方向に向かうイメージで、ボールが置かれているラインを「0」と考えると、限りなく0の位置からヘッドが入るというソンウのスイング。これが「ねじれが少ないハイボールを生み出します」と辻村氏。さらに「このスイングで、適正なスピンを入れることができています。男子はパワーでスピンを入れることができますが、女子はそうはいかない。フェースの使い方が重要になってきます。フェース面にばらつきがないから、スイングの再現性も高いですね」と評価した。
■キリンの上に象は乗らぬの法則=強いアジア選手の条件
この安定感あるスイングを生み出すヒミツを、辻村氏はソンウの足に見出した。どっしりとした下半身が、スイングの再現性を高めることにつながっている。「体幹がしっかりとしているのが一目瞭然。スイングの時に、個人差が出るのが下半身。その使い方に個性が出ます」。欧米の選手と比べ、手足が短いアジアの選手は、上半身を鍛えるよりも、下半身を鍛えることがゴルフで結果を出すためのメリットになると辻村氏は語る。
「米国ツアーで活躍する欧米選手を見ると、上半身が鍛えられている選手が目立ちますが、アジアの選手は、下半身が安定している人に強い選手がよく見受けられます。“キリンの上に象は乗らぬの法則”とでも言っておきましょうか。細い足の上に、筋肉隆々の上半身はアジアの選手にはメリットがあまり大きくないのでしょう」
実際、ソンウにトレーニングの話を聞いてみると、「私は下半身の筋肉は十分あるという結果が出ているので、今はバランスよく鍛えています」と話していた。この言葉を聞いても、筋力面で今のソンウのプレーを支えているのは、しっかりと安定したその足であることがうかがえる。
■「手がつけられない存在」になる可能性も
今大会では、最終日の16番のセカンドショットにミスが出て、ここをダボとしたソンウ。これが大きく影響し、渋野に優勝を譲る形にはなったが、その実力に疑いはない。
「年間1勝は間違いなくするでしょうし、複数回優勝を狙う力も十分にありますね。このショット力で、あとはパットが改善されたら、手がつけられなくなりそうですね」
平均パット数のスタッツを見ると、パーオンホールが全体20位(1.8289)、1ラウンド当たりが47位(30.1667)。さらに3パット回避率は「6.0185%」の79位と、ショット面に比べるとグリーン上にはまだスキがうかがえる。だが、それを差し引いても、これまで日本ツアーで勝利を重ねてきた強い韓国選手の系譜に名を連ねることに、辻村氏は太鼓判を押した。
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、山村彩恵、松森彩夏、永井花奈、小祝さくらなどを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。
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