「日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯」に続き、「日本女子オープン」でも圧倒的な強さを見せつけた畑岡奈紗。その強さが、日頃プレーしている米ツアーで磨かれたものだということについて異論をはさむ者はいないだろう。米国でプレーすることの意味はどこにあるのだろうか。
ユ・ソヨンの足がアスリートしてる件【写真】
日本の女子ツアーも人気が高まり、若い有望な選手が次から次に出てきてレベルアップしているのは間違いない。3月初めから11月末までのシーズン中、休みなく試合が行われ、賞金も年々上がり、ギャラリーも多い。移動が多いといっても、日本国内のこと。試合が終われば自宅に帰れることも多い。国土が広大なため何週間も遠征続きとなる米ツアーのようなことには滅多にならない。自宅が遠い場合や、経費を節約する場合に限られる。“職場”としての環境は比較的整っている。
しかし、高校3年で日本女子オープンに優勝すると、畑岡は米ツアーで戦うことを選んだ。1年目には何もかも違う環境の中で生活そのもので苦労し、自分のスイングを見失い、泣きながら母に電話をしたこともあると打ち明けている。それでも、日本ツアーではなく米ツアーを自分の戦いの場と定め、すでに3勝と結果を出している。日本ツアーはスポット参戦となっているが、その中で今年は4戦2勝。前述のようにこの2勝が公式戦タイトルだ。
意外に知られていないが、米女子ツアーのごく普通の大会は、それほどギャラリーが多くないのが一般的だ。男子のPGAツアーとは規模も全く違うし、華やかさも対照的だ。男子と女子の人気が逆転現象にある日本から行くと「ギャラリーが少なくて寂しかった」という感想を漏らす選手も少なくないほど。移動も含め、日本に比べると環境は厳しい。
しかし、広い米国の様々なコース、多くの種類の芝、天候を経験すること、さらに世界一を目指して世界中から終結した選手と毎週戦える環境は常にある。
トーナメントプロは、試合で賞金を稼ぐのが一番の仕事だから、一番稼げる場所を選べばいい。それぞれの事情や、それぞれのタイミングもあるだろう。ただ、畑岡が常に上を目指し、自ら厳しい環境に身を置くことで自分を磨いていることだけはまちがいない。
日本ツアーでプレーしているからといって、選手が成長しないわけではない。渋野日向子は日本の試合での経験すら少ない中で、「全英AIG女子オープンに優勝しているのがそのいい例だ。その渋野は、同い年である畑岡が見せた姿を間近で見て何を感じたのだろうか。日本で初優勝する前、今年の3月には、同世代の活躍に「『みんなすごいな』と思うばかりです」とういういしいコメントをしていたが、あっという間にメジャー女王となった。全英で予選落ちした畑岡が、その悔しさをバネにしたことを日本女子オープン優勝の際、口にしているほどだ。
全英優勝直後には、今のところ行く気がないと話していた米国への興味を、近頃のぞかせ始めた渋野が、台湾で行われる「スウィンギング・スカーツLPGA台湾選手権」(10月31〜11月3日、ミラマーGC)に出場する。翌週には、日米両ツアー共催の「TOTOジャパンクラシック」(滋賀県・瀬田GC)もある。メジャー優勝者として、また米ツアーの選手の中でそこで何を感じ、今後に向けてどんな気持ちを持つのか。米国であれ、日本であれ、選手として磨きをかけることはできる。どんな決断をしても、どうせ周囲はかしましい。それに振り回されることなく、自分をしっかり持ち続けてアスリートとして高みを目指す最善の方法を選べばいい。(文・小川淳子)
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