2020年東京五輪の話題が一気に増えてきた。猛暑を懸念しマラソン競技が北海道へ会場変更となるなど、国民の注目も一気に高まってきている。ラグビーワールドカップも空前の盛り上がりを見せた19年。正式競技として前回の16年リオから五輪に戻ってきたゴルフは、果たしてどこまでの注目を集めているのだろうか。
今季6勝目! 誇らしげにカップを掲げる鈴木愛【写真】
19年は日本の女子ゴルフ界にとって、大きな転換期になったと思う。国内ツアーは今週開催の「伊藤園レディス」を含み3試合を残すが、激動というひと言がぴったりのできごとが世界中で起きた。畑岡奈紗が3月の早い段階で米ツアー3勝目を挙げたのは、その実力を考えれば驚きでも何でもなかったが、8月に渋野日向子が「全英AIG女子オープン」で海外試合初出場初優勝の快挙を達成した。そして、来季の米ツアー予選会を上位で突破した河本結と山口すず夏。来年は五輪イヤーにふさわしく、日本女子プロが世界で活躍をみせることになる。
畑岡と山口はすでに米ツアーメンバーとして戦っているが、そこに“スポット参戦”する予定の渋野。さらに、年間20試合以上は出場可能とみられる河本が加わる。若手が世界へ目を向け、海外ツアーでも日本勢の存在感が一段と増すことになるだろう。そして、その傾向が強まるのが、自国開催の五輪での日本勢の活躍に他ならない。
五輪代表となるためには、世界ランキングをもとにした五輪ランキングで各国の上位に入る必要がある。来年の6月末までに世界ランキングの上位15位までに入れば、各国最大4人まで出場が可能で、15位外の場合は各国最大2人となる。現時点の日本勢を見ると畑岡奈紗が4位。渋野日向子が15位。そして、その渋野に肉薄しているのが国内連勝を果たした鈴木愛だ。12日現在の最新ランキングで自己最高の19位に浮上。一気に五輪戦線に名乗りを挙げた。
鈴木は先週の優勝で今季6勝目。連勝のうち、2勝目は日米共同主管大会の「TOTOジャパンクラシック」で、獲得した世界ランキングポイントも高く、一気にランキングを駆け上がった。これで渋野との差は4ランクとなり、2人の2枠目を争う戦いは、8カ月間続くことになる。もちろん、渋野がそうであったようにほかの選手が海外試合で勝利し、一気にランキングを駆け上がることもあり得ることだが、当面は、この2人の争いは続くことになる。
渋野が全英優勝時に獲得した世界ランキングポイントは「100」で、他大会に比べ圧倒的に高い数字。鈴木が今回のTOTOで獲得したのは「43」、前週の「樋口久子 三菱電機レディス」の優勝では「18.5」ポイントの獲得だった。ちなみに、日本勢トップ3の今季の優勝で得たポイントを参考までにみてみると、下記のようになる。
■畑岡奈紗
キア・クラシック(米ツアー) 62ポイント
日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯 22ポイント
日本女子オープン 20.5ポイント
■渋野日向子
ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ 19.5ポイント
資生堂 アネッサ レディス 19ポイント
全英AIG女子オープン(米ツアー) 100ポイント
デサントレディース東海クラシック 20.5ポイント
■鈴木愛
ヨコハマタイヤPRGRレディス 19.5ポイント
宮里藍 サントリーレディス 19.5ポイント
ニチレイレディス 19ポイント
ニトリレディス 19ポイント
樋口久子 三菱電機レディス 18.5ポイント
TOTOジャパンクラシック 43ポイント
世界ランキングは過去2年間(104週)の試合で獲得したポイントによって順位が決まるが、直近13週の試合がより重視される仕組み。それ以前の試合で獲得したポイントは、毎週一定の割合で減点されていく。つまり、安定して上位に入ることがランキングを維持することにつながり、鈴木のようにコンスタントに優勝を重ねることはランキング維持にも有効だ。ただし、渋野の全英100ポイントは減点されていっても、元が大きいだけに、その存在感は圧倒的だ。
上のまとめをみれば分かる通り、世界ランキング上位選手が多く出場する米ツアーのほうが日本ツアーよりもポイントを稼げることになる。渋野が来年の海外女子メジャー大会に出場する意向を示しているのはそのためだが、当然メジャーで結果が出なければ、日本ツアーに出場して上位に入ることで獲得できるポイントより低いポイントとなることも十分想定される。そのため、日米どちらに軸足を置くかというのは、この世界ランキングのポイント稼ぎだけを考えれば、難しい問題なのは間違いない。
日本は残り3試合でオフに入り、来年の3月まで試合はなくなる。米ツアーは1月中旬に新シーズンがスタートするため、日本開幕前の段階でポイント稼ぎに行くという決断も出てくることになるかもしれない。いずれにせよ、この世界ランキングポイント獲得のための計算はどうしても意識してしまう物になってくるが、これだけにとらわれず、少しでも多くの日本人選手が、純粋に海外で活躍する姿を見たいものだ。(文・高桑均)
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