<ダンロップフェニックス 最終日◇22日◇フェニックスカントリークラブ(宮崎県)◇7027ヤード・パー71>
寄せなければ負けが決まる72ホール目のツマ先上がりのバンカー目玉からのアプローチ。大学生プロの石坂友宏はこれを見事に1メートルに寄せて、金谷拓実とのプレーオフに持ち込んだ。そしてプレーオフ4ホール目。入れなければ負けるというグリーン奥からアプローチでは、「チップインを狙って『入れる』という気持ちだった」とボールはカップに向かって転がっていったが、わずかにカップ右に抜けて勝負あり。負けても随所でショートゲームの上手さが光っていた。
石坂は小学校5年生でゴルフを始めたときからアプローチが好きだった。自宅近くの練習場で多いときは500球を打ち込んだ。いまでも練習をするときは「アプローチだけで3、4時間やる」という。また、アプローチだけでなくパッティングの練習にも多くの時間を割く。最終組で迎えた3日目の朝も最終日の朝も、スタートの2時間前には練習グリーンに紐を張って、1メートルのパットを真剣に練習する石坂の姿があった。
決勝ラウンドでは「緊張はメチャクチャありました」という石坂だが、それで早くコースに着いたわけではないという。10月に行われた下部のAbemaTVツアー「石川遼 everyone PROJECT Challenge」の会場で、日本大学1年の杉浦悠太に教えてもらった練習を、それ以来ルーティンにしているのだ。
「飛距離だけ出なくて小技の部分をもっともっと今以上に磨いていかないと、上では通用しない。もちろん世界を目指していますけど、まずは日本ツアーに出させてもらって、上位で名前を売る。それには自分の得意なアプローチ、パターをもっと磨いて、これからも練習していきたい」と考えている。
以前、石坂にアプローチ練習法を聞いたことがある。「アプローチの基本は右手の片手打ちです。左手ではあまりやらないですね。それからバンカーの上から打つ練習をよくやります。これも片手で打ったり、両手で打ったり。砂の上だとちょっとでも手前から入るとダフっちゃうので、それがすぐわかるんです」と教えてくれた。バンカーからクリーンにボールをとらえる練習は、小学生のときから続けている。
実際、「三井住友VISA太平洋マスターズ」の会場にウェイティングで来ていた石坂は、一日中バンカーの上で練習していた。結局、出場機会は回ってこなかったが、その積み重ねが翌週、フェニックスCCの難しい洋芝からのチップインバーディやパーセーブにつながったに違いない。ショートゲームの練習の成果は、数字にも表れている。ツアーでの平均パットは1.7347で1位、リカバリー率は64.63%で6位につけている。
「100ヤードでも50ヤードでも30ヤードでも緩むことが多くて、癖としてある」と語る石坂が参考にしているのは、松山英樹と石川遼のアプローチだという。「松山さんとか遼さんはあまり緩まない」。そんな石坂が目標とする石川が、最終日の囲み取材で「石坂くんって大学何年生なんですか?」と逆質問してきた。今大会が始まるまでは、ほぼ無名の存在だったが、この活躍で確実に名前が浸透してきている。
甘いマスクもあって、週末は『石坂友宏』が検索ワードで急上昇、インスタグラムのフォロワー数も急増。惜しくも初優勝は逃したが、「いろんな人に知ってもらえればもっとうれしい」という石坂の思いは達せられた。(文・下村耕平)
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