<パナソニックオープンレディース 最終日◇2日◇浜野ゴルフクラブ(千葉県)◇6638ヤード・パー72>
同じ熊本県勢の2人、上田桃子、大里桃子によるツアー史上初の“プレーオフ桃子対決”を制したのは、先輩・上田だった。トータル5アンダーで並んだ12歳下の後輩をくだした優勝は、葛藤を乗り越えてのものだった。
9番パー3で行われたプレーオフ2ホール目。大里のボギーパットが決まるのを見届けた後、1メートルのウイニングパットを流し込んだ。決まった瞬間、両手を上げてガッツポーズ。今大会でキャディを務めた辻村明志コーチに肩を抱かれ、師弟で喜びを分かち合った。
この日の正規の18ホールのスコアはノーバーディ・1ボギー。「まさかバーディが1個も来ないのに勝てるなんて。ガマンしていれば、いいことがあるということを今週学べました」。コース付近の瞬間最大風速20.2メートルを記録し、他の選手が出入りの激しいゴルフを続けるなか、歯を食いしばりながらパーを拾い続けたことが2年ぶりの優勝につながった。「あれだけガマンしたから最後はご褒美が来るはず」。緊張感が高まるプレーオフすらも、そんな心境で臨めた。
優勝後の会見では、ここ数週間深い悩みのなかにいたことを明かす。「何を目標にすればいいのか」。モチベーションのやり場が定まらない日々を過ごした。コーチに涙ながらに、「(今のままでは)勝てる気がしない」と打ち明けたことも。同じ辻村コーチの指導を受ける小祝さくらが、目標に「賞金女王」を掲げ猛練習を積む姿や、若い選手のプレー、活躍する場面などを見るたびに、そんな思いは強まった。その答えを探すため、先週コーチとともに茨城県の大洗ゴルフ倶楽部で2日間のミニ合宿を敢行。「久々にワクワクした」というコースで、1つの答えを見つけた。
「ベテランの強みは何かなと考えた時に、どの選手よりも1番基礎ができる選手になろうと思いました。残りどれくらいプレーできるかは分からないけど、後輩たちにも『基本が大事』と伝えられる。自分もそこれが自信につながる。誰よりも基礎を大事にしよう、そう思いました」
かつて何度も繰り返した100ヤード以内のショット練習も、経験を積んだ今では2〜3球にまで減少。最近では、これまでにはないミスも試合で出るように、それが違和感にもなっていた。「地に足がついていなかった」という自分を律するために、ここで“初心”に立ち返ることを決意した。
「これまでは自分が1番だと思ってやっていましたけど、先輩たちが見せてきてくれたものを、後輩にも見せないと。泥臭くというか、うまくやろうと思っていた。年齢に関係なく勝つための姿勢は見せたい。後輩たちからも刺激もらっているので切磋琢磨していければ」
これが新たな上田桃子のスタイルだ。来週は今年初のメジャー大会「ワールドレディス サロンパスカップ」を迎える。これまでの勝利のなかに公式戦のタイトルはなく、「メジャーで優勝したい」というのは積年の思い。そしてこの後も、誰よりも基礎練習を繰り返し“悲願成就”を実現してみせる。(文・間宮輝憲)
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