2021年の国内メジャー初戦「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」では、芹澤信雄が愛弟子の西山ゆかりのキャディを務めた。初日のラウンド後、芹澤のもとにかけ寄ってきて、「ありがとうございました!」とお礼をいう女子プロの姿が。身長174センチの人気プロ、脇元華だ。それを覚えていたら、第3ラウンドでは西山と脇元が同組となった。そのラウンド後にも芹澤は脇元に何やらアドバイス。どんなやりとりがあったのか、芹澤に聞いてみた。
「脇元さんはプロ入りする前の10代の頃から、チームセリザワの番組に出てもらったり、ウェアの契約が同じマスターバニーだから、よく知っていた。僕が教えている林菜乃子とも仲が良いしね」。実は前々から脇元にアドバイスをしたいことがあったという。そんな流れもあって、開幕前の練習場で西山の近くで打っていた脇元のスイングを見ることになる。
具体的にはどんなアドバイスをしたのか。「スイングはきれいなんだけど、フィニッシュで逆C字になる。クラブが前に流れて左に振れていなかったんです」。『逆C字フィニッシュ』とは、スイングを正面から見たとき、体が反ってアルファベットの『C』を逆にしたような形になること。つまり、脇元は下からすくい上げるように打っていたのだ。
「全体的に下からクラブが入ってきていたので、アイアンの方向性や距離感はボケるし、ドライバーは右に吹けたり、左に引っかかる。フォローもすごく大きいし、スイングも大きいからきれいには見えるけど、いまのプロたちの主流を見ていると、左ワキに締まりがないんです」
そこで、芹澤が脇元に教えた修正法は、チームセリザワ名物の『連続打ち』だ。オフの合宿では藤田寛之や宮本勝昌も行っている。ボールを数球地面に並べて、アイアンのハーフスイングで歩きながら打っていく。下からのあおり打ちで逆C字のフィニッシュになっていると、スムーズにクラブを戻すことができないので、リズムよく打てない。左ワキを締めて左右対称に振ると動きに無駄がなくなり、あおり打ちが修正されるのだ。
「脇元さんにボールを5個並べて連続打ちをさせてみたら、一発目に左ワキが開いてボールが右に飛んで『ほら見ろよ』って。二発目からバーン、バーンときれいに打てるようになって、本人も『久々にやりましたけど、こうなっていたんですね』と納得していた。アマチュアも下からしゃくる人が多いから、難しいと思うよ」
それで初日をアンダーパーで回ってきた脇元が芹澤にお礼をいうシーンにつながる。続いて西山と脇元が同組だった3日目のラウンド終了後に、何を伝えたのかも聞いてみた。「アイアンはいいんだけど、ドライバーで左股関節が下がっていた。最近は“地面反力”が流行っているからみんな沈みたがる。右も一緒に下がれば良いんだけど、左だけが下がるからインパクトでは右股関節が下がって逆C字になる。そこを直したらと伝えました。もし今度、西山と回ったら20ヤードは置いていかれるでしょうね」
第3ラウンドを見ていた感じでは、西山のほうが脇元よりも前に飛んでいた。脇元は5番ホールではドライバーを左に引っかけてOBからダブルボギー、6番パー3を挟んで続く7番ホールでは右の林に入れてボギーを打っていた。それを見ていた芹澤は、ラウンド後にアドバイスせずにはいられなかったのだ。
「女子の会場に来たときは、スイングを見て勉強している」という芹澤に、スイングがいいと思う女子プロについても聞いてみた。「古江彩佳さんのスイングはすごくいい。クラブをインサイド気味に上げておいて、弓のようにパーンと打っていく。肩から肩が左右対称に振れていて、左サイドの締まりもある。それから小祝さくらさんもいいね」と教えてくれた。
脇元は直近の3試合は予選落ち。今大会では芹澤のアドバイスもあって、4試合ぶりの予選通過を果たした。このあとの試合で脇元の飛距離や成績がどうなっていくのか、気になるところだ。
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