ブラント・スネデカーのプロとしてのキャリアスタートは、2007年にまでさかのぼる。当時は賞金ランキングトップ3のタイガー・ウッズ、フィル・ミケルソン、ビジェイ・シン、4位のスティーブ・ストリッカー、7位のジム・フューリク、13位のマーク・カルカベッキアといった、圧倒的な存在感を誇る中堅、ベテラン選手がそろっていた。
そして、フェデックスカップ・プレーオフシリーズがスタートしたのも同年。「プレーオフシリーズに関しては、全員がある意味“ルーキー”だった。メンバー全員が同時になにかのルーキーという状態は、かなり珍しい。とても楽しみだ」とスネデカーは当時語っていた。
PGAツアーが行おうとしていたのは、他競技と同じように、シーズンの締めくくりに年間チャンピオンを決めること。新しい試みではあったが、たった15年ですっかりツアーのビッグイベントとして定着し、これまで様々なドラマを生んできた。今では、フェデックスカップなしのプロ人生を知らないツアーメンバーが大半で、どの選手もシーズンの集大成としてプレーオフに目標をさだめている。
フェデックスカップは、トップ選手の構成にも変化をもたらした。07年はトップ10選手の平均年齢が34.2歳だったのに対し、今シーズンはレギュラーシーズン1大会を残した時点で28.7歳。これまでプレーオフシリーズが行われた14シーズン中、9シーズンで、総合優勝者はレギュラーシーズン後にトップ10入りしていることも関係しているだろう。
現在の10選手を見ると、コリン・モリカワ、ジョーダン・スピース、パトリック・キャントレー、ハリス・イングリッシュ、ジョン・ラームと、そうそうたるメンバーがトップ5入り。6位以下を見ても、エイブラハム・アンサー、ブライソン・デシャンボー、ルイ・ウーストハウゼン、ジャスティン・トーマス、サム・バーンズと、誰が年間王者に立っても不思議ではない。
何度も年間王者に輝いたタイガーの言葉を借りるなら、「勝利がすべてをもたらしてくれる」ということだろう。
特に、直近の結果はタイガーの言葉を顕著に表わしていた。ただし、18年のような“逆転劇”があったことも忘れてはならない。同年はウッズがツアー選手権を制したが、ジャスティン・ローズがプレーオフで1勝もしないまま年間王者に輝いた初めての選手となった。ところが19年シーズンからは、「ツアー選手権」の優勝者が年間王者タイトルをものにするというシンプルなものになった。
しかし、プレーオフシリーズに進出した125選手のうち、最終戦まで進めるのはたった30選手。ツアー選手権まで進むと、ポイントランキングによって振り分けられる“ハンディキャップ制”が効力を発揮する。ランク1位は10アンダーからスタートし、2位は8アンダー、3位は7アンダー…と、上位選手がリードを持って大会をスタートする。そうなると、シリーズを通しての上位入りは必須だ。
現在ポイントランクトップにいるのは、24歳のモリカワ。全英、WGCを制すなどトップ10入りが8度。東京五輪でも銅メダル争いに加わるなど、年間王者への期待値も高い。今季復活の兆しを見せているスピースも候補者の一人。現在ランキングは2位。マスターズでの3位を含め、元世界1位の実力を見せている。
他にもキャントレー、イングリッシュ、デシャンボーも今シーズン優勝を挙げていて、ポイントランク14位の松山英樹もマスターズ優勝、五輪のメダル争いと活躍を見せてきた。13位のザンダー・シャウフェレも、五輪で金メダルを獲得した勢いそのままにプレーオフ入り。ビクトル・ホブラン、ホアキン・ニーマン、スコッティ・シェフラー、イム・ソンジェなど新鋭たちの存在も忘れてはならない。シーズンを通して最高のパフォーマンスを見せてきた選手のみが集うプレーオフシリーズ。いよいよ、2020−21年のロングシーズンの王者決定戦がやってきた。(ジム・マッカービー著)
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