<HSBC女子世界選手権 2日目◇4日◇セントーサGCタンジョンC(シンガポール)◇6718ヤード・パー72>
シンガポールでの今季初戦を迎える前、「グリーン周りのウェッジの精度をしっかり練習してきました」とオフの練習内容について話していた渋野日向子。4オーバー・60位タイと出遅れた初日の巻き返しを狙った2日目に、その成果が目に見えるようなプレーがあった。
まず最初が前半の17番。浮島に向かって打つパー3のティショットは、アイアンで右に切られたピンを狙ったが、それがグリーン右にこぼれ、傾斜下まで転がり落ちる。「外してはいけないところにいってしまった。どうやって寄せるか」と本人も振り返ったように、ショートサイドの難しいアプローチが残ってしまった。
渋野が握ったのは58度のウェッジ。ここでフワリと浮かすことはせず、低めに打ちだしたボールを土手で1クッションさせ、そこから転がして寄せる策略に出た。するとその思惑通り、コロコロと転がるボールは1メートルにピタリ。「ボールを失速させて寄せる。イメージ通りできて、あそこはすごくうれしかったですね」。見事な寄せワンで、ピンチをしのいだ。
さらに初日にダブルボギーを叩いた6番パー4でも、進化の跡をうかがわせた。ここはラフからの2打目を、グリーン右のバンカーに落としたという場面。ピンは左サイドで、距離もかなり残っている状況でボギーもやむなし、と感じさせる状況だ。ただここからのリカバリーショットをまたも1メートルに寄せ、サンドセーブに成功した。
この日、唯一のボギーを叩いた8番パー5で、左足下がりのラフから打った4打目のアプローチはフワリと浮かせたもの。これをピン5メートルに寄せ、ロスを最小に防いだ。状況に応じた寄せ技を次々繰り出した。「グリーン周りや、パッティングも微妙な距離が入って内容はよかった」と大会を放送するWOWOWのインタビューに答えた渋野。3バーディ・1ボギーの「70」と2つ伸ばし、トータル2オーバー・49位タイに浮上。一気にジャンプアップとまではいかなかったが、果敢にピンを狙い、随所に強気のパットを見せる攻撃的な姿勢に加え、守備面でも光るプレーが見てとれた。
全英制覇を成し遂げた2019年以降も、アプローチのバリエーションというのは大きな課題として挙げてきた部分。この時はアプローチ時はひたすら58度を握り、基本に忠実といっていい寄せに終始しており、20年のオフには「練習の99%」をアプローチに費やすなど、引き出しを増やす取り組みは何も最近始まったことではない。
コースの距離も長く、芝質も日本とは異なる米国ツアーでは、今後幾度となく厳しいグリーン周りからのプレーを強いられるはず。ここからさらに磨きをかけなくてはいけない部分なのも間違いはない。そこで戦うという覚悟がプレーにあらわれた、2日目のラウンドだった。
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