<パナソニックオープンレディース 最終日◇1日◇浜野ゴルフクラブ(千葉県)◇6660ヤード・パー72>
トップに立っていたテレサ・ルー(台湾)を1打差で追いかけていた15番パー4。バーディパットがなかなか決まらずガマンを強いられたそれまでの展開を、西郷真央は鮮やかすぎるショット一撃でガラリと変えた。
ティショットをフェアウェイ左サイドに置き、残り169ヤードの2打目。つま先下がり、左足下がりのなか西郷は6番アイアンを選択した。「フォローの風なので、フルショットだとオーバーしてしまう。少し抑え目のショットで、傾斜で流れてよってくれれば」。そう考えて放たれたショットは、まさしく計算通りの軌道を描いた。
グリーン右サイドのカラー付近に落ちたボールは、傾斜でキックされるようにしてカップ方向へと転がる。そしてそのままラインに乗りると、キレイに吸い込まれた。西郷の視線が追っていたボールが消え、ギャラリーの大拍手がコースに響く。普段ポーカーフェースのイメージが強い20歳だが、その瞬間は両手を挙げて“バンザイ”。キャディを務めた麗澤高(千葉県)の先輩・河野杏奈とハイタッチして、よろこびを爆発させた。
「すごいショットが打てた。100点に近い。心臓がドキッとしました」。奇跡のようなショットインイーグルで、逆にテレサに1打リードの単独トップに浮上した。「こんなラッキーがあっていいのかなって。帰り事故に気をつけないと、って思いました。前半はバーディパットがなかなか入らなかったけど、諦めなかったからそういうラッキーにつながった」。ラウンド後、改めてそのシーンを振り返っても“信じられない”といった様子だ。
最終18番では、残り190ヤードから4番ユーティリティでの2打目が2オン。ダメ押しとなるバーディを奪い、トータル10アンダーで逆転優勝に成功した。これで今季7戦4勝。“勢い”という言葉だけでは片づけることのできない、神がかった一打でまた一つ勝利を積み重ねた。
2週前の「KKT杯バンテリンレディス」会場入り後に寝違えのような症状で首を痛め欠場。今週が3試合ぶりの復帰戦だった。ようやく練習を再開できたのは、1週前の22日(金)から。「そこまで自分に期待していないなか、優勝できたのはすごくうれしい」。少しのブランク、体調の不安なども今の西郷を止めるにはいたらない。
次戦は今季メジャー初戦の「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」(茨城県・茨城ゴルフ倶楽部 西コース)。東コースで行われた昨年は、最終日を2位で迎えながら手にすることはできなかったビッグタイトルだ。「力み過ぎて空回りした記憶がある悔しい大会」。それを晴らすにふさわしい力を、一年をかけて培ってきた。あす2日(月)にはさっそく会場入りし、準備を進めていく。
地元・千葉県で早くも4つ目となる優勝カップを掲げた。その脅威的なペースに、本人も「早く1勝できればと思っていたなかで、こんなにいい結果が出るとは思ってもいなかった」と戸惑いすら感じるほど。またこの優勝で来年3月開催の米女子ツアー「HSBC女子世界選手権」出場権も手にした。「もともとプロを目指したときから海外志向は強い。そういう機会はうれしい」。順調すぎるほどのシーズン序盤戦を過ごしている。来週には“西郷時代の到来”を、さらに印象づけることになるのだろうか。(文・間宮輝憲)
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