毎週、ゴルフツアー会場で選手たちを撮影し続けるプロカメラマン。インサイドロープでプロゴルファーの凄みや熱気を感じ、ときおり会話のやりとりを見聞きするなど、試合中の選手たちに“最も近いメディア”であるツアーカメラマンが、今季の国内女子前半戦で見た印象的な景色を紹介する。
アマチュアゴルファーで1万分の1程度、プロでも3000分の1とも5000分の1ともいわれる花形プレーがホールインワン。コース内でいくら選手たちのプレーを見続けていても、めったに遭遇するものではない。
「もう、ウン十年も撮影している」という上山敬太カメラマンも、ここまでその機会を目撃することはなかったという。「思い返してみてもホールインワンを撮影した記憶はまったくない。米国で小林浩美選手(現日本女子プロゴルフ協会会長)が練習ラウンドで達成したものを撮ったことがあるくらいかなー…」。
そんなベテランに「初めてなのかもしれない」という経験をもたらしたのが、今年4月の「フジサンケイレディス」第1ラウンドだった。初日は成績を重視しつつ、数多くの選手を“広く浅く”撮影していた上山カメラマンは、この時「成績を見て18番グリーンをのぞき、17番グリーンへと向かう」という動きをイメージ。そして川奈の名物ホールを撮影ポイントにする時間を設けた。
するとそこにすぐやってきたのが、16番でバーディを奪い、2アンダーと伸ばしていた藤田さいきだった。「17番グリーンの方から見ると、選手の後ろには海が広がっていてキレイだな、と」。藤田のティショットの様子を望遠レンズで撮影しながら、そんなことを頭に思い浮かべていたのだが、すると…。
『入れーーーーー!』。突然、耳に入ってきたギャラリーの声。そして次の瞬間、ティイングエリアでバンザイをして同伴競技者とハイタッチする藤田の姿をファンダー越しに目にした。すぐに状況を把握。無心にシャッターを切る。
「その時点で何位だったかまでは記憶していないし、何となく撮影していた(笑)」というなか訪れた「幸運」と振り返る出来事。ちなみに自身6度目となったホールインワンについて、ラウンド後の藤田は「ここでいつか入ったら、とずっと思ってきた。入る夢を見たこともある」と明かしていた。夢が“正夢”になり、さらにホールインワン賞500万円がかかっていたことも相まってルンルン気分。ただ、これに加えて思わぬ“幸運”を手にし、その後、富士の麓で足取りが軽くなったカメラマンが居たことも、ぜひ覚えておいてもらいたい。
<ゴルフ情報ALBA.Net>