毎年12月初旬に韓国・水原(スウォン)で行われるイ・ボミの韓国ファンクラブの忘年会に招待され、今年も参加した。
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そこで見たボミの表情はとても元気で生き生きしていた。ツアーが終了したあとのつかの間の開放感。今シーズンの出来事をすべて忘れるかのようにハツラツとしていて、とても元気だった。家族と過ごす時間がそうさせているのだろう。
忘年会はボミのあいさつから始まった。
「今日もこうして貴重な時間を出していただき、遠くからお越しいただきありがとうございます。今年は私にとってすごくつらいシーズンでしたが、たくさんのことを学び、たくさんのことを経験しました。みなさんの顔をみると、悪い記憶はすべて忘れられそうです。今日は楽しい時間を送っていただければうれしいです。カムサハムニダ」
ボミは正直に“つらいシーズンだった”とファンの前で言った。それほどに彼女にとっては、日本に来てから初めて味わう苦しい1年だった。
かつての強さは一体どこにいってしまったのか――。
そう思うほど、2015年と2016年の賞金女王となったイ・ボミの強さは、2017年の前半から陰りが見え始めていた。
なかなか優勝できないばかりか、珍しく予選落ちも経験した。それでも8月の「CAT Ladies」で1勝し、翌週の韓国ツアーのハイワンリゾート女子オープンでホールインワンするなど3位タイで完全復活したかに思われたが、そこから再び成績は下降をたどった。
賞金ランキング23位でシード圏内の順位を確保はしたが、1シーズンで予選落ち4回は、日本に来てからのワースト記録。裏を返せば、それだけボミが安定した成績を残してきたということだが、一番納得していないのは本人にほかならない。
「ショットの感覚が戻らない」
今年は何度、この言葉を聞いただろうか。“ツアー屈指のショットメーカー”と言われるほど、正確無比なショットは鳴りを潜め、トーナメントの中継でも中々、テレビに映ることも少なく、成績に比例してメディアの露出も少なくなった。
8月に優勝したあと、ボミに話を聞いたとき、こう心境を吐露していた。
「優勝してからも、まだ自分に足りない部分はあります。ショットもショートゲームもパッティングもすべていいバランスを維持しないといけません。今はそれらすべてのバランスが良いとは言えず、1つが良ければ、何かが悪くなったりするなかで、流れを待っている状態です。正直に言えば、精神的にしんどい状態ではあります」
それでも「イ・ボミだから大丈夫」――。そういう固定観念が、少なからずゴルフファンやギャラリー、メディア、関係者の中にあったはずで、少なくとも筆者も「いずれ復活する」と見ていた。
だが、百戦錬磨のボミでさえも、かつての調子を取り戻すのは難しい作業だった。
忘年会は笑いが絶えなかった。ボミと韓国のファンたちの掛け合いや一体感を見ると、とても愛されているのがよく伝わってくる。いくら成績が悪かろうと、支えてくれる人たちがいるのは彼女の人徳だろう。
帰る前に話を聞いた。ボミはこの1年をこう振り返った。
「私はこれまで日本でたくさんの愛情をいただいてきたので、それに応えるためには成績しかないという思いが常にありました。そのプレッシャーがすごくつらかったんでしょうね……。ただ、今年の最終戦では『ファンに最後に見せられる試合だからベストを尽くそう』という気持ちで挑むと、すごくいいプレーがたくさんできたんです」
ボミなりに自分に何が課題だったのかは、理解しているようだった。
「過去の成績があまりにも良かったので、競いあうことが自分にとってはすごくしんどいことだったんだなともわかりました。シーズンが始まるときから、そういう気持ちがかなり負担になっていましたから。それでも、初心を忘れないことに気づきました。常に『これが最後』という気持ちを持って、もっと情熱を持ってやることが大切なんだと……」
珍しく自らを厳しく叱咤した。まだまだ、戦うことを諦めていないということだろう。それにボミは「『これくらいでいいかな』と自分で満足してしまう部分がありました。そんな気持ちでは、他の選手よりも私の成績は落ちていくしかなかったんだと思います」と反省も口にしていた。
だからこそ、2018年は同じ轍を踏みたくないと強く思っている。
「今までは『ゴルフを楽しみたい』という気持ちがあったのですが、『ゴルフを楽しむ』というのは、もしかしたら違うのかもしれません。もっと、自分に厳しく、もっとがんばるという気持ちでいなければ、(ゴルフを)やる必要はないかもしれません。それをすごく感じた1年でした」
想像した以上にボミは覚悟を決めていた。自分の不甲斐なさを悔やみ、それを力に変えようとしている――。イ・ボミはまだ、燃え尽きてはいない。
文/キム・ミョンウ
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