毎週、ゴルフツアー会場で選手たちを撮影し続けるプロカメラマン。インサイドロープでプロゴルファーの凄みや熱気を感じ、ときおり会話のやりとりを見聞きするなど、”試合中の選手たちに最も近いメディア”であるツアーカメラマンが見た印象的な景色を紹介する【全米プロゴルフ選手権編】。
【連続写真】タイガーが吠えた!今季一番のガッツポーズを連続写真でチェック!
タイガー・ウッズ(米国)の完全復活が期待された「全米プロゴルフ選手権」最終日。猛烈な追い上げを見せて「66」をマークし、首位を走るブルックス・ケプカ(米国)をおびやかした。最終的に2打届かず2位に終わったが、久しぶりのタイガーチャージに世界中のゴルフファンが熱狂したのは間違いない。
4日間、現地でウッズの撮影に臨んだ岩本芳弘カメラマンが振り返る。「このような試合で撮影できて、今も感動しています」。これまで何度もウッズの雄姿を撮影してきた岩本カメラマンにとっても、これほどまでにウッズの存在感と迫力のプレーに魅せられたことは、久しくなかった。
「昨年の暮れ、バハマでツアー外競技に復帰したタイガーはドライバーショットでフルスイングできるまでの体に戻っていました。スイングスピードもびっくりするくらいで、体の動きもキレていました。一緒に回っていたジャスティン・トーマスをアウトドライブするくらいの飛距離も出ていましたから。そこから今年の戦いに入りましたが、『本当に優勝できるかも』という、カメラマンとして感じるドキドキした雰囲気は、残念ながら春先にはありませんでした」(岩本カメラマン)
ウッズのツアー復帰戦となった「ファーマーズ・インシュランス・オープン」。ここでは23位タイと上々の成績だったが、2月の「ジェネシス・オープン」ではドライバーが右に左に大暴れで予選落ち。この不調をすぐさま修正すると、そこからはたびたび上位に顔を出し、「全英オープン」で優勝争いの末に6位タイ。そして今回の2位につながっている。
「今回の全米プロでは何か違う雰囲気を感じました。それは、ティショットでフルスイングする場面があまり見られなかったことです。素振りのときでも、トップでシャフトが垂れるくらい深く入れるのですが、脱力素振りというのか、ヘッドの重さを感じているのか。最近では見られない素振り。マン振り!といわれるようなショットは私が撮影した場面では1度も見られませんでした。飛距離に関してはクラブやボールの良さもあり、それなりに出ていたので特に影響はなかったのでしょう。でも迫力の面ではドライバーでの強さは感じなかった。その代わりにトラブルや大事なパットの雰囲気はガラッと変わり、全盛期を思い出させるような迫力ある表情、スイングでパワーをはき出していました。その瞬間スイッチが入ったように、こちらもドキドキを覚えました」(岩本カメラマン)
最終日のウッズからはなんとしても首位を捉えるというオーラが随所に感じられた。なかでも、岩本カメラマンが凄みを感じたのは9番と18番だったという。
「特にすごかったのは9番のセカンド。普段からトラブルのときの撮影位置はできるだけ飛球線近くに入って迫力ある写真を狙っていますが、その9番では全盛期のときのような位置取りでも「下がるように」といわれず、そこから放たれた一打はシュッ!と自分の真横を通り過ぎていきました。その音は時間がたった今でも思い出すくらい迫力あるショットでした。そしてギャラリーの押し寄せる波にもまれながらタイガーが真横を通り過ぎるまでシャッターを押し続けた。あっという間に私はギャラリーの波にのまれていました。『これだ!この雰囲気だ!またこのドキドキを味わえる!タイガーが戻ってきた!』。そんな思いが沸き上がりました」と述懐するほど、鳥肌ものの瞬間だった。
「最終18番のガッツポーズは『どうだ!これがタイガーだ!まだまだやれるぞ!』と自分にいい聞かせるのと同時に応援してくれた大勢のギャラリーへ『ありがとう!』と感謝をこめているようなアクションに感じました。ガッツポーズを終えて何歩か進み、ほうを膨らませ、息をはき出し、天を見上げた表情はすべてを出し切った満足気な表情で、その先にいたキャディーのジョーと見つめ合う表情は苦しいときもずっとそばにいて支えてくれた相棒への感謝をこめた最高の笑顔に見えました」(岩本カメラマン)
海外メジャー15勝目を挙げたときにこそ、ウッズ完全復活は果たされる。そのときが近づいているのは、今回の気迫あふれるプレーからも一目瞭然。もっとも身近で感じた岩本カメラマンのこの1枚が、その瞬間が間もないことを物語っている。
<ゴルフ情報ALBA.Net>