<ツアー選手権 最終日◇23日◇イースト・レイクGC(7,362ヤード・パー70)>
米国男子ツアーの2017-18シーズンが幕を閉じた。最終戦の「ツアー選手権」はタイガー・ウッズ(米国)が優勝。実に5年ぶりとなるツアー優勝で、サム・スニードの持つ通算82勝に2つと迫る80勝目を飾った。
【写真】タイガーを追うギャラリーの数がハンパない!
3日間首位を守りきり、最終日も最終組を回ったウッズ。終盤は「プレッシャーもあった」というほどの緊張感に襲われたが、ファンはそんなウッズを応援し続けた。「以前はもっと拍手があったけど、今はスマートフォンを持っているから少ないね(笑)」と冗談交じりに話したウッズだが、その笑みは久しく見られなかったものだった。
ウッズが最終18番ホールのティショットをフェアウェイに運んだころ、グリーン上ではジャスティン・ローズ(イングランド)が年間王者に向けた戦いに挑んでいた。
フェデックスカップ王者が決するこの日。18ホールの戦いの中で注目されたのは、ウッズの復活優勝とともに、年間王者の行方だった。3日目を終えて、圧倒的に有利な立場にいたのがローズ。首位のウッズと3打差の2位タイから出たローズは、2人以下の5位タイ以内でフィニッシュすれば、ウッズの結果に関係なく、王者戴冠が決まるはずだった。
最新のランキングではトップを陥落したものの、前週まで世界ランキングトップに上り詰めていたローズ。有利な立場でラウンドをスタートしたはずだったが、前半は1オーバー。後半に入ってもボギーが3つ来る展開で、順位を落としていった。「6アンダーが(王者になるための)条件だと思っていた」というローズ。トータル5アンダーまで落としていた状況で、18番パー5に勝負をかけた。
ここでローズは359ヤードのビッグドライブを見せ、ラフからのセカンドショットをグリーンに運んだ。約10メートルのイーグルパット。「あの状況を考えると、1メートル以上残したくなかった」と振り返る。後ろを振り返れば、大ギャラリーがウッズの後を追って、フェアウェイはファンで埋まっていた。「みんなウッズの状況も分かっていたのだと思う。はじめて経験した異様な雰囲気だった」。
「一瞬だけ静まりかえった時があって、このときと思ってファーストパットを打った」と、イーグルパットは外れたものの、バーディパットをタップインして緊張から解放された。最終順位はトータル6アンダーの4位タイ。ギリギリでの王者戴冠だった。
「5位を目指して戦ったことは今までなかった」と振り返ったローズ。ウッズの存在がすぐ後ろに忍び寄る中で勝ち取った、年間王者とボーナスの1000万ドル(約11億円)。ホールアウト後は家族と抱き合い、喜びを分かち合った。
「まだ王者のチャンスがあるかもしれないと思っていた」とウッズがいうように、組こそ違え、王者戴冠に向けた2人のバトルは、見応えがあった。「ローズは素晴らしいプレーヤー」と、タイガーがたたえれば、「ようやく勝ったね(笑)」と、ローズも冗談混じりでウッズに賛辞を贈った。
ウッズ優勝というシナリオに終わった今季の最終戦だったが、ローズも見事に主役をはった。17歳のときに「全英オープン」でセンセーショナルなデビューを果たしプロ転向。長いスランプを経て、13年にメジャー制覇。16年にはリオ五輪で金メダルも獲得。今年は世界一の座も射止めた。最後には年間王者という称号を手に入れた38歳。苦難の末に復活優勝を果たした42歳のウッズとともに、2人がつくり出した時間はまさしくドラマティックだった。
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