来季3大会が中止となり、試合数も2試合減少する国内女子ツアー。そのうちの2大会が震災被災地の宮城県、熊本県の大会とあって、胸を痛める選手は多い。その一人、山形県出身で、宮城・東北高卒の大江香織が失意の胸のうちを明かした。
「特別な大会」で優勝カップを掲げる大江香織【女子プロ写真館】
21日(金)に、ウェア契約を結ぶマンシングウェアのイベントに登場した大江。ここでゴルフのことだけでなく、趣味、交遊録などについて笑顔で語ったが、話題が今年優勝した「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」が来季中止になるというトピックに及ぶと、それまでとは一転、「残念です」と話し、悲し気な表情を浮かべた。
放映権問題の影響で、東北唯一の国内女子ツアーは来季のスケジュールから“消滅”。この宮城での大会を「特別」と語る大江にとって、そのショックはあまりにも大きいものだった。「子供の頃からあって、慣れ親しんでいた」ことに加え、自身のプロデビュー戦にもなった大会。縁もゆかりも深いのはもちろんだが、“特別”と感じる理由はほかにもある。
大江が中学1年生だった2003年にこの大会を制したのは当時18歳だった宮里藍。実に30年ぶりとなるアマチュア優勝を見ていた大江は、それ以来「藍先輩が優勝するのを見て、刺激をもらった大会」と、この大会がゴルフを続けるうえで大きなモチベーションになっていた。そして、そこからは、練習量も倍に増やし、それまでつらいと感じていた練習が苦にならなくなったほど。“プロゴルファー・大江香織”の原点といっても過言ではない。それだけに「(中止は)残念。途絶えてしまうのが悲しかった」という思いはひとしおだ。
プロテスト合格から9年経った今年、ようやく欲しくてたまらなかったタイトルを獲得。ディフェンディングチャンピオンとして気持ちも新たに臨むはずだったが、中止という決定がくだされることになった。「今年勝てていなければ2度とチャレンジできなかった。自分にとって一生の思い出。優勝できたのは嬉しかった」。その言葉からは寂しさがあふれている。
さらに今回の中止に熊本での大会も含まれることについても、「大きな震災被害を受けた場所での大会が、一気に無くなるのはいい策ではなかったと思う」と本音も口に。女子ツアーとして復興支援に精力的に乗り出し、それに選手として参加してきただけに「募金活動に協力してくれたギャラリーの気持ちを考えても残念。この2大会は、被災された方々に大会を通じて元気を与えたいと思う特別な大会でしたし、色々事情はあるのだろうけど、残念」と胸を痛める。
イベントの席上でも「東北でまた試合をやって欲しい。雪深い地域なので、ゴルフをプレーするのに決して適した場所ではないけれど、いつも大会にはたくさんのギャラリーがかけつけ、ゴルフ熱はすごく熱いです」と、愛する土地でのトーナメント開催をアピール。「私たちだけではなく、ゴルフファンのみなさんの声に、(協会、主催者などが)心を動かしてくれると思う」と、“大会復活”への後押しを、来場した多くの人々に呼びかけた。
だが少なくとも今は、東北での試合スケジュールが空白のまま2019年シーズンに臨まなくてはならない。「私が大会に参加できて、プロとしてやれているのは協会あってのこと。また大会主催者、テレビ局のみなさんのおかげでもあるので、受け入れてやっていくつもりです」と気丈に話し、前を向いて新たな年に向かっていく。
「自分には何ができるのか。それを見極めながら過ごしていくつもり」。一人ひとりの強い思いが、“雪解け”への大きな力になることを信じて、これからも誠心誠意クラブを振り続ける。
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