21日(木)に開幕する「ホンダLPGAタイランド」で今季2戦目を迎える畑岡奈紗。昨季ツアー初優勝を含む2勝を挙げたが、今年の状態はどうなのか。WOWOWなどで解説を務める小田美岐に、2019年初戦となった1月の「ダイヤモンド・リゾーツ・トーナメント・オブ・チャンピオンズ」の結果を踏まえ、話を聞いてみた。
畑岡奈紗 バネでボールを飛ばすドライバースイング
去年は「もっと勝ってもおかしくない」と思えるほどの一年でした。2017年はシードを獲ることができず、Qスクールに行っての参戦となりましたが、二回目の挑戦ということで慣れてきたのとお母さんが帯同するようになったので、本人のゴルフ以外の心配がなくなったというのが大きかったと思います。
今年も開幕戦を見た限りでは、いいと思います。また、ひと回り体が大きくなりました。去年まで下半身にすごくフォーカスがいっていましたが、上半身、肩から腕にかけても強くなっている。スイングを見ても、今までは『ここぞ』というときに、スイング中に「えい」とジャンプしてしまってヒザが伸び上がり安定感が欠けていたのが、開幕戦ではほとんどなくなって下半身が「シュッ」とその場で回れるようになってきていました。
パッティングがポイントですね。開幕戦ではすごく悪かったですけど、上半身をトレーニングするとどうしてもショートゲームに影響がくるもの。そのあたりを自分の中でどう消化していくか。元々パッティングがすごく上手な選手。状態が上がってきたら、結構いけると思います。
あとはメンタル面。選手は誰でもそうだと思いますが、以前よりも上手になり周りの人が「前より良くなったね」って思っていても、自分自身にとってはあくまで今の状態が自分。ちょっとでも失敗すると「前よりも下手になった」と思ってしまうものです。去年の途中から自分を許せないという部分が、見ていてきついのかなと思っていました。実際に態度に出ることもありましたからね。
テニスの全米オープンで勝つ前の大坂なおみさんみたいな感じといえば、分かりやすいでしょうか。この前の全豪オープンでの大坂さんのプレーを見ていて、奈紗ちゃんもこういう風にカームダウン(気持ちを落ち着かせること)がうまくなって、ラウンドしている中で自分の気持ちを自分で落ち着かせることができれば、もう一段上に行けると感じました。
とはいえ、今年もしっかりと勝ってくれると思います。ただ、畑岡さんの今年の一番の目標は、ツアー優勝というよりはメジャーを勝ちたいというものではないでしょうか。ですから、たとえ去年のように複数回優勝ができず、一つしか勝てなくてもそれがメジャーだったらOK。ただ、やっぱり優勝はして欲しいですよね。焦らなければできると思います。畑岡さんの場合は「こんなはずじゃないのに」って思い始めると、自分を追い込んでネガティブになってしまうから。それをコントロールできたらいいかな。
その目標を踏まえると、どこにどのようにピークを持っていくのかが気になるところです。1月の開幕戦に出て、豪州二連戦は休んでタイから出場。「この一カ月でもう一度しっかり練習してやっていく」と言っていましたが、たぶんそれは4月のメジャー「ANAインスピレーション」に照準を合わせてのことだと思います。ただ、ANAは日本勢が上位に中々いけない大会でもあります。もちろん頑張って欲しいですが、『この一カ月の休み期間でどこまでできているかなぁ』というのが初戦を見た印象でした。悪くはないですが、メジャーを勝てますか?といわれるとそこまでの状態にはまだ来られていなかったのかなというのが感想です。畑岡さんが良くなっただけでなく、周りも相当レベルアップしていましたからね。
勝てそうなメジャー大会というと、やはり「KPMG全米女子プロ」でしょうか。昨年はプレーオフにも進んで2位タイで、大会のネーム的にも相性がいいというのも効いてくると思います。選手というのは面白いことに、こういうバイオリズムというのがなんとなくあって、ここの試合を頑張りたいと思ってもなかなかいい成績を出せないこともあったり、去年全米女子プロであそこまで頑張れたということは、畑岡さんにとってはあの時期に自分のファイティングスピリットみたいなものが上がってくるバイオリズムなのかなと思います。5つあるメジャーの中でも、特に注目したいですね。
小田美岐(おだ・みき)/1959年4月5日生まれ、京都府出身。通算6勝。ティーチングプロフェッショナル資格A級も保持している。現在は解説者として国内女子ツアーだけでなく、米国女子ツアーの解説を務めることも多い。
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