基本的にお金の話が嫌いという人はいないだろう。下世話だなぁと思っても、12月になれば毎日のようにテレビのスポーツニュースでプロ野球選手の契約更改が取り上げられるし、サッカーで言えば移籍金の高さが、獲得するチームのその選手に対する評価としてセンセーショナルに報道される。それがゴルフとなればなおさらだ。今なお日本では男女両方のツアーが獲得賞金額によって頂点の座が決められ、翌年のシード、すなわち職場の有無が決まるのである。
“セクシー・ノースリーブ姿”のこの人も、後半戦はほぼ出られます
だからこそ国内女子ツアーの前半戦最後の試合となった「アース・モンダミンカップ」は盛り上がった。大会終了後の賞金ランキング上位5人には「全英AIG女子オープン」の出場権が付与、また第1回リランキング前最後の試合として、7月以降の出場優先順位が決まるのである。ここでの戦いが7月以降に大きく影響するのは間違いなかった。
そんな節目の試合が、去年よりも総額で2000万円増額されて賞金総額2億円(優勝3600万円)と、こういった何かが決まるタイミングでの賞金としては最高額となった。ちなみに他の試合を例にとると、以下の通り。
「CAT Ladies」日本女子オープン出場者決定前 賞金総額6000万円
「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」第2回リランキング前 賞金総額7000万円
「富士通レディース」TOTOジャパンクラシック出場者決定前 賞金総額8000万円
「大王製紙エリエールレディス」賞金シード決定前 賞金総額1億円
もう一つ、いつ決定するか分からない賞金女王があるが、10月末の「NOBUTA GROUP マスターズGCレディース」(アース・モンダミンカップと同じく今季より賞金総額2億円)で決まることはまずないため、“節目”という意味で今大会が最高額といっていいだろう。
この金額の高さが、勝負をさらに面白くさせた。全英には30名近い選手が可能性を残し、リランキングに至ってはここまで獲得賞金がゼロの選手でも単独12位に入れば、昨季実績でリランキング40位のボーダーである320万円を獲得できる計算。一発逆転の可能性が様々な選手に生まれたからだ。
7月以降の出場権争いでは、リランキング69位の宮崎乙実が初日に首位と1打差の5位発進を切る。その後もリランキング勢の一喜一憂の展開が続き、結局リランキングのボーダーとなる40位圏外から34位の安田彩乃(開幕前は42位)、35位の大西葵(同51位)、39位の野澤真央(同55位)らが滑り込んだ。大西、野澤は15位タイに入り188万円を獲得しての滑り込み。まさに一発逆転だった。
また、アン・シネ(韓国)もリランキング45位に浮上して、昨季実績で後半戦全試合に出場できそうな順位に入った。一方で宮崎は37位タイと伸ばせず、リランキングは58位と、7月から9月末までの全試合出場は叶わない順位でのフィニッシュ。今大会の出場権がなかった藤田光里は、41位から46位に、松森彩夏は45位から50位と大幅に順位を落とした。
全英出場権にも多くのドラマが生まれた。出場圏内の賞金ランク5位につけていた河本結が、最終日に連続トリプルボギーで大きく順位を落とすなか、穴井詩が最低条件となる7位でフィニッシュ。だが、その後多くの選手が順位を落とし、賞金ランク6位につけていたイ・ミニョン(韓国)が出場圏内に浮上したが、黄金世代・渋野日向子が4位でフィニッシュ。こちらも単独7位以上という厳しい条件だったが、大きくクリア。結局勢いづく20歳が、逆転で海外メジャーへの切符をつかんだ。
まさにベタなクイズの『最終問題だけ得点が倍』状態ではあった。それゆえ、これまでの頑張りが報われづらくなった展開には賛否があるかもしれない。たまったもんじゃない、と思っている選手もいるだろう。
だが、あくまでも偶然ではあるが、初日は日本の南海上にあった熱帯低気圧により強風が吹き荒れ、2日目は台風が通過して30度近いなかでのバーディ合戦。3日目は一日中雨、そして最終日は風速10.1m/s、最大瞬間風速20.7m/sの強風。4日間異なるコンディションの中で、それぞれの権利を勝ち取った選手は誇っていい。
ましてや優勝した申ジエ(韓国)や渋野など、この試合に前半戦の照準を合わせていた選手は少なくない。賞金を多く加算するために、狙った試合に自分の状態をピークに持って行く、これも一つのゴルファーとしての力だと思う。獲得賞金で評価される以上は―。(文・秋田義和)
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