レギュラーツアー1勝にステップ・アップ・ツアー1勝も加わった藤田光里。プロテスト合格が2013年、ファイナルQTトップ通過も同年。初シードが14年。そして15年4月には「フジサンケイレディスクラシック」でツアー初優勝。順風満帆に見えていたプロ生活に陰りが見えたのが16年終盤。その後は下降線をたどった。
大人になった藤田光里のスマイル集【写真館】
17年にはシード陥落。実はこのとき左ヒジに激痛が走りはじめていたが、だましだまし転戦を継続。18年1月には意を決して手術に踏み切った。そして今季、ステップ・アップ・ツアーを主戦場に戦うと決め、“2勝目”を下部ツアーで挙げることになる。
レギュラーツアーで優勝という栄光を勝ち取り、挫折も味わい、ようやく復活を遂げようとしている藤田光里。いまだからこそ明かせる心境を語ってもらった。
■ステップ優勝がここまで取り上げられるとは…
約1カ月前の6月23日。藤田光里のはじける笑顔がグリーンに戻った。「ユピテル・静岡新聞SBSレディース」で優勝。「今年はステップを主戦場にするというのを決めていた中で勝てたので、1つ思いが叶ったというのはありました」と、そのときの心境を振り返った。
プレー中も笑顔。優勝が決まってからも笑顔。涙はなかった。「流れが自分に来たなというのがプレーしているときに分かりました。冷静に最後まで行こうと思って勝てました。感動の涙というのはなく、かみ締める感じでした」。苦難の3年間を思い、静かにギャラリーの声援に応えた。
今年のフジサンケイレディスでは推薦出場から5位タイ。1試合でレギュラーの第1回リランキング突破もほぼほぼ手中に収めていたが、気持ちに変化はなかった。「出させていただく試合で全力を尽くして、できることをやろうと思っていた」。今年一貫して藤田が発してきた言葉だが、かつてのレギュラー優勝やシード喪失などは過去のもの。挑戦者の気持ちでつかんだ新たな1勝だった。
試合はCS放送や地元のテレビ局でも流れた。翌日の報道でも、大々的に取り上げられた。「レギュラーツアー並みに取り上げてもらって恥ずかしかったです(笑)」と照れるが、それだけ周囲をも巻き込む劇的なカムバックへの一歩だった。不振の時も支え続けてくれたファンも会場に集結。むしろ藤田以上に喜びを爆発させ「皆さんがずっと応援してくださるのが、本当に力になりました」と、ともに喜びをかみ締めた。
■ゴルフが好きになったいま、進む道が広がった
このステップ優勝のインパクトは大きかった。その時点ではステップ賞金ランキング2位に浮上。シーズンの同ランキング上位2名には、来季のレギュラーツアー前半戦の出場権が与えられる。その立場に近づいたと同時に、前述のレギュラーでのリランキング突破も果たしており、「シーズンが始まる前には、こんなにいろんな道ができるとは思っていなかった」と自身でも驚きを隠せなかった。
そこで、藤田は7月以降、ステップではなくレギュラーへの道を選んだ。「9月末の第2回リランキングまではレギュラーに出ます」。力強く発した言葉に迷いはなかった。後半戦初戦の「資生堂 アネッサ レディス」で9位タイ。周囲は復活シード入り、はたまたレギュラー優勝への期待を高めるが、「第1回リランキング突破はできましたが、前半戦の積み上げがほとんどないので、シード入りは現実的ではない。でも、せっかくのチャンスなので、9月まで頑張ってみます」。与えられた環境でベストを尽くすという思いにブレはない。
とはいえ、昨年実績でいくと、シード入りにはここから約1900万円の獲得が必要となる。さらには、このまま賞金の上積みができずに第2回リランキングから漏れる可能性もある。「ダメだったら、またステップに戻って、ランキングで2位までを目指します。といっても、そこまでの間で一気にランキングも抜かれているでしょうから、そのときはそのとき(笑)」。焦りもなく、目の前に分かれている道を選択し、「そこで精一杯のゴルフをする」気持ちに変わりはない。
「シードもダメで、ステップ1位、2位もダメだとしても、ファイナルQTから出られるので、今度はそこに向けてという感じになっていきます。そこで上位に入れば、また来年レギュラーに戻ることができますから」。ステップ優勝でQTは最終から出場が可能。この道も藤田自身が切り開いた道であり、たとえその場に立つことになったとしても、今では「大好き」というゴルフに楽しく向き合うのみ。苦節を味わったからこそ生まれた「ゴルフが大好き」という気持ちを持って、シーズンの終盤戦に挑むことになる。
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