<マイナビABCチャンピオンシップ 最終日◇3日◇ABCゴルフ倶楽部(兵庫県)◇7200ヤード・パー72>
首位と1打差の単独2位で最終日をスタートしたハン・ジュンゴン(韓国)。ドライバー、アイアンともにショットの調子がよく、前半は9ホール中5ホールで3m以内のバーディチャンスにつけた。しかし、それを生かし切れず、奪ったバーディは2つ。9番を終了した時点で首位の今平周吾に並ぶのが精一杯だった。
仲間たちから手荒い祝福を受けるハン・ジュンゴン【写真】
「前半だけでなく、今日はパットのラインがまったく見えなかったんです。ただ、入らなかったことに執着せず、とにかくリズムよくプレーすることだけに意識を集中しました」(ジュンゴン)
後半、今平が10、12番でバーディを奪い、2打差に広げられたときも、自分のリズムを崩すことなく、無心でクラブを振り続けた。よけいなことは考えず、目の前のボールをいかに狙ったところに運ぶかがこの日のテーマだった。それがノーボギーという安定感につながる。
そして、今平に1打リードで迎えた最終18番パー5、ジュンゴンは最初からイーグルを狙いにいく。
「今平選手は絶対にイーグル狙いでくるし、実際にイーグルを奪うはず。自分が勝つためには、イーグルを獲るしかないと思いました」
予想どおり2打目を先に打った今平はピン手前4mにつける。それでも黄の視界にはピンしか見えなかった。ピンまで残り188ヤード。6番アイアンで放ったボールはピン左2mへ。昨年のパー5での2オン率第1位(16.67パーセント)はダテじゃないところを見せる。
しかし、まだ安心はできなかった。先に今平がイーグルパットを決めたからだ。2mとはいえ、スライスの難しいライン。少しでも強めに打てば、ボールはカップの左をすり抜ける。ラインを正確に読み切ったうえでタッチを合わせて、初めて沈めることができるラインだ。
「なぜかこのパットのときだけ、ラインがはっきりと見えたんです。あとは自分の読みを信じて打つだけでした」
チャンスを逃してもあきらめずに我慢し続けたご褒美かもしれない。カップの中にボールが消えたことを確認すると、右手でガッツポーズをつくったジュンゴン。4年ぶりのツアー4勝目に思わず笑顔がこぼれる。
「何度も優勝のチャンスがありながら敗れてきましたからね。特に今年の日本プロで石川遼選手にプレーオフで敗れたことはショックでした。自分自身、勝負弱さを感じていただけに、今回も敗れたらトラウマになったかもしれません(笑)」
ある意味、今後のゴルフ人生を左右するほどの勝利だったかもしれない。来年から母国・韓国での兵役義務を受ける可能性もあるが、その前にもう1勝挙げたいというジュンゴン。年間2勝すれば3年シードをもらえるだけに、この勢いを持続したいところだ。(文・山西英希)
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