<LPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ 最終日◇1日◇宮崎CC(宮崎県)◇6535ヤード・パー72>
ここでバーディを獲ったら…、ここでボギーになったら…。そんな一進一退の賞金女王争いを尻目にペ・ソンウ(韓国)が、優勝に向け着実にスコアを伸ばしていった。終わってみればトータル11アンダー。2位に4打差をつける圧勝劇で、日本メジャー初勝利を挙げた。
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無欲の勝利だった。元々コーライ芝の経験は少なく、宮崎カントリークラブで行われるようになった2003年から、初出場で優勝したのはインビー・パーク、イ・ボミ(ともに韓国)の2人だけ。そんな“一見さんお断り”の難コースを前に、当初の目標は「トップ10に入れたらいいな」程度だった。
3日目を終えて1打差の2位。それでも目標はトップ3と欲はかかない。「独特なグリーンでバーディが出るときは出るし、外れるときは外れる」。賞金女王争いにも加わらず、お祭りのようなムードが優勝争いの緊張を解いた。渋野日向子に競り負けた「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」をはじめ、ここまで最終日に伸ばしあぐねるケースが目立ったが、この日は楽な気持ちが良い方向に働きサンデーバックナインで4バーディ。勝負弱い姿はそこにはなかった。
韓国女子ツアー賞金ランキング2位(1位は全米女子オープン優勝のイ・ジョンウン6)の実績をひっさげて臨んだ昨年の日本ツアーQTでは、3日目を終え47位タイ(最後は14位)と苦戦を強いられあわや出場権を逃しそうに。それでもしっかりと開幕に照準を合わせて2戦目の「ヨコハマタイヤ PRGRレディス」で6位タイに入ると、8月に日本参戦を決めたときから「一番勝ちたい」と言い続けていた「北海道meijiカップ」で初優勝。そして最終戦でメジャータイトルをつかんで、順風満帆といえる1年を送った。「今週勝つ前に“今年は100点”と言っていたのですが、これで300点になりました!(笑)」と笑顔がはじけた。
日本参戦初年度から活躍できたのには、こんな理由があった。「クラブハウスのロッカーにある体のケアを行うところで、韓国の選手はもちろん、勝みなみさんや松田鈴英さん、金澤志奈さんといった選手の方々と仲良くなれたことでツアーに馴染むことができました」。それらの選手と韓国の化粧品などの情報交換をしている姿は、すっかりよく見る光景となった。
もちろん同郷の先輩たちが土壌をつくってくれたことも忘れてはならない。「私は韓国の選手で一番年下ということもあって、たくさんのアドバイスをいただけます。特に(ペ・)ヒギョンプロは美味しいお店や、ゴルフ以外の部分でもいろいろ教えてくださるので非常に助かっています」。周りを囲む先輩が、プレーしやすい環境を整えていてくれる。
その中でも一番の大先輩・李知姫(韓国)はロールモデルだ。「今大会の開幕前に知姫プロとお話ししたときに、日本で19年もプレーされていて、この大会にも15回も出場されたと聞きました。私もそのように長い間活躍できるプロになりたいと思います」。その知姫に「私は40歳までプレーしたいです」と話すと、「目の前の1年1年をこなしていくことが大事」とアドバイスされたという。
これで3年間の複数年シードも獲得。「3年もいられると思うと社員になったようですね(笑)。シードの心配をしないでプレーできるのはうれしいです。来年はもっと果敢に攻めたいですね」。とはいえ慢心はない。「今年は学ぶ姿勢でやってきました。その姿勢は変わりませんが、来年はもう少し余裕をもってギャラリーさんとともに戦っていけるように頑張りたい」。
さらに上に行くための課題も分かっている。「賞金ランキング上位の顔ぶれを見ればパターがうまくなければいけないのは明らかです。それに日本のセッティングではユーティリティを上手く打てないとだめ」と向上心は尽きない。「本当に日本に来て良かった」。そう話した25歳は、来年さらにツアーを盛り上げてくれそうだ。(文・秋田義和)
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