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ゴルフを守るために、心がけと気遣いを！【舩越園子コラム】

2018年11月に開催されたタイガー・ウッズとフィル・ミケルソンの世紀の対戦「ザ・マッチ」が、この5月にチャリティ版として再び開催されることが、主催者のターナースポーツから発表された。
きっとエキサイティングなマッチになることだろう。だが、単純に大喜びすることに私はためらいを覚える。ゴルフにたずさわる者、ゴルフを愛する人々には、ぜひとも周囲への気遣いや配慮を忘れないでほしいと思う。
今回発表されたマッチは「ザ・マッチ：チャンピオンズ・フォー・チャリティ」と銘打たれている。2018年の初回は「勝てば9ミリオン（約10億円）」を競い合うドリームマッチだったが、今回は新型コロナウイルス感染拡大の影響で苦境にある人々や医療関係者を支援するためのチャリティマッチだ。
そして、今回はNFLのビッグスターであるトム・ブレイディとペイトン・マニングが加わり、2対2のチーム戦で行う予定だそうだ。
当初、この話が漏れ聞こえてきた途端、開催地を巡って、さまざまな噂が流れた。というのも、2018年の開催地はネバダ州ラスベガスのシャドークリークだったが、現在ネバダ州はコロナ禍でゴルフ場が閉鎖されている13州のうちの1つゆえ、今回はラスベガス以外で開催されると思われるからだ。
そんな中、いの一番に名乗りを上げたフロリダ州のロン・デサンティス知事は大会招致への意欲を興奮気味にツイッターで発信した。
「ゴルフはソーシャル・ディスタンスを保てばプレーできる素晴らしいスポーツだ。今、人々には新鮮な空気が必要なんだ」
だから「ザ・マッチ」をぜひともフロリダ州のゴルフコースで開催し、人々にリフレッシュしてもらいたいという意味だった。TV放映は米TNT局が予定されており、「非常に高い視聴率が期待されている」という報道もある。
確かに、ゴルフファンにとっては「待望」なのかもしれない。だが、フロリダ州知事が招致への意欲をツイートした途端、即座に多数の返信が届き、その9割以上が「怒りの返信」だったそうだ。
「6週間も休業補償が支払われず、トラブル続きの州政府のウェブサイトは改善すらされない。知事がゴルフに向ける熱意は、州の住民に対しては全然注がれていないと感じる」
「失業状態のまま、家財を1つ1つ売り払って生活費を捻出中。次はTVを売るしかないというときに、ゴルフのテレビマッチだなんて、冗談だろ？」
「たとえチャリティ目的であっても、今はゴルフにうつつを抜かしている場合ではない」
そんな怒声が飛び交っているのも事実であり、それがコロナ禍の現実である。
一方で、米国の医療専門家らが「一定の決まりを守れば、屋外でプレーするゴルフは感染リスクが低い」というレポートを発したのも事実だ。もっとも、米国と日本ではゴルフ場で実際にプレーする際の手順や慣習は大幅に異なるため、米国で言われている「ゴルフは感染リスクが低い」が、そのまま日本に当てはまるとは言えないと私は思っている。
だが、米国の医療専門家が言っているように、プレーヤーどうしが距離を保ち、ピンフラッグに触れない等々の注意事項をすべて守ることで、コロナ禍においてもゴルフは続けられるのだとすれば、それはゴルフというゲームがたまたま授かった幸運である。
その天の恵みを「ゴルフはOKだ！」という具合に、あたかも印籠のごとく示すことは絶対に控えたい。感染リスクに対して、どう考え、どう対処すべきかは個々のゴルフ場や個々のゴルファーの判断に委ねるべきなのだろうが、今は世界中、日本中に、さまざまな状況下でさまざまな想いを抱いている人々が大勢いることを忘れてはならない。
ゴルフをすること、ゴルフの試合を楽しみにすること、声援を送ることは、ゴルファーやゴルフファンにとっては当たり前であっても、それが隣にいる誰かの心を傷つけることもある。
大変な世の中だからこそ、天の恵みを授かったゴルフが人々や社会のための存在となり、みんなから愛されるスポーツであり続けてほしい。そのためには、ゴルファー1人1人の心がけや気遣いが何より大切なのではないかと私は思っている。
文/舩越園子（ゴルフジャーナリスト）
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