新型コロナウイルス感染拡大の影響で、国内だけでなく世界各国で中止が余儀なくされているゴルフトーナメント。なかなか試合の臨場感を伝えることができない状況が続いています。そこで、少しでもツアーへの思いを馳せてもらおうと、ツアー取材担当記者が見た選手の意外な素顔や強さの秘訣、思い出の取材などを紹介。今回はあの選手の性格について(?)
昨年の「宮里藍 サントリーレディス」3日目が行われた6月15日。豪雨によりサスペンデッドとなったこの日に33歳の誕生日を迎えた上田桃子プロが、10ホールを消化しクラブハウスへと戻ってきました。その後行われた囲み取材中、思わずクスッと笑ってしまったコメントがありました。
「普段はあれだけ性格がいいのに、コースセッティングになると、まあまあ性格が悪いなと思いました(笑)」
これは、大会の冠にもなっているアンバサダーの宮里藍プロに向けられたもの。この年から4日間全72ホールのピンポジションを宮里プロが決めることになったのですが、その“難しさ”を表現した言葉がこれでした。
期間中にバースデーを迎える上田プロにとって、やはりこの大会はスカッと結果を残したいところ。しかし、初日こそアンダーパーの「70」で回ったものの、2日目は「75」と苦しい一日となりました。前日の貯金を使い果たすどころか、ラウンド中の順位は予選通過圏外まで急降下。それでも最終18番で「一人寂しい誕生日は絶対に避けたかった」と2.5mのバーディパットを執念で沈め、最後の最後でカットラインギリギリながら決勝ラウンド進出権をつかみとりました。“ヘトヘト”になりながらも、何とか会場で誕生日を迎えることができたのです。
そして迎えた誕生日当日。結果的に2日かけて行われた第3ラウンドは、序盤から前日とは打って変わって難コンディションのなかしっかりとスコアメイク。サスペンデッドになるまでの10ホールで4バーディ・1ボギーと順位を上げて帰ってきました(最終的にこのラウンドは「68」をマーク)。そんな激しいアップダウンを繰り広げたことが背景にあったこともあり、冒頭のコメントがよりユーモラスに聞こえたのです。このナイスラウンドを宮里プロからの“プレゼント”と感じた…ということはなかったようで、続けて「本当に全ホール、めちゃくちゃ読みにくいです」という感想ももらしていました。
ただ、この言葉には続きが。「“こっちから打てばバーディが獲れる”みたいなこともはっきりしていて、すごくフェアなポジションでもあるんですよね」。やりがい十分! という気持ちが、その裏に隠されてもいました。
大会開幕前には、こんな話も聞きました。実は誕生日以外にも、上田プロがこの大会に対して強い思いを抱く理由があったのです。1学年上の宮里プロは、かつてともに米国でもプレーし、「ゴルフのことも一番相談に乗ってくれる」という良き先輩。公私ともに親交が深く、「“宮里藍”という名前がついている大会を盛り上げられるように頑張ります」という意気込みを、事前に本人へと伝えていたそうです。
長年米国でも活躍し、世界1位にも立ったことがある宮里プロ。それほどの人物が、これまでの経験をフルに生かしてセッティングを考えると、選手が『嫌だなー』と感じることが分かるからか、“いじわる”なコースに仕上がるんだな、なんていうことを感じました。と同時に、2人の関係性がすごく伝わってくるコメントだなとも思いました。
昨年の会場で宮里プロは、「もっと勉強をして、今後もセッティングに携わりたいですね」と“続投”も表明していました。残念ながら今年は、六甲国際ゴルフ倶楽部のグリーン上で頭を悩ます選手たちの姿を見ることはできませんでしたが、来年は、そんな宮里プロの“性格の悪さ”にも注目しながら観戦すると、楽しさがさらに増すかもしれません。特に上田プロの表情は必見!?(文・間宮輝憲)
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