「ゴルフ5レディス」でツアー2勝目を挙げた小祝さくら。前週の「ニトリレディス」で笹生優花との一騎打ちに敗れた悔しさを、2年前にプレーオフで敗れた因縁の地で晴らした。指導するプロコーチの辻村明志氏は、今回の勝利に大きく貢献したのはパッティングの成長だと語る。
■開幕戦で感じたモヤモヤ そこから始まった猛特訓
6月の今季開幕戦「アース・モンダミンカップ」。辻村氏は見ていてこう感じた。「なんでショットがこんなにいいのに13位なんだろう?パッティングも覚悟を持って向き合わないと」。そのあとから早朝の猛特訓が始まった。
朝6時から約3時間、ひたすら球を転がした。「始めたときはボールを見る目の位置、ボール位置、アライメントが毎回バラバラでした。打つ動作も一定じゃない。動いてほしいところ、動いちゃいけないところのメリハリがついていなかった。嘘ではなく、何10カ所もチェックしました」。イチからではなく、ゼロから。基本的なことから全部を見直したの。
動作で一番気になったのが、本来動かなければいけない広背筋や体幹が動かず、リストを使い過ぎて手元の動きがバラバラだったこと。そこで辻村氏は定規と包帯を用意。添え木のように左手首に定規を固定するために包帯でぐるぐる巻きに。リストが嫌でも動かないようにして、体で打つ感覚をつかませた。
また、道具も改めた。太めの形状で手首をロックしてくれるスーパーストロークから、それよりも細いグリップに変更した。「あえて手首がより動いてしまうグリップにして、なりやすい動きをより分かりやすくしました。そのうえで、手首が動かない動きを覚えさせました」。また、細いグリップにしたことで感性を出して打つことも身に付けた。
雨の日も風の日も、酷暑の日も、毎日毎日取り組んだ。そうして自然にアドレスに入れるようになり、手首が動く癖が減った。さらには「雨の日にもやったことで重たいグリーンでしっかり打てるようになりました」といった副産物もあった。もちろん、『あれだけやったのだから大丈夫』という自信もついたのは言うまでもない。
■“ショート癖”を意識から改善 その成果は数字として表れた
練習の成果は、ツアー屈指の難グリーンを誇る小樽カントリー倶楽部で表れる。アマチュア時代から出場していたものの、なかなか結果を残せなかった大会で最後まで食い下がり2位に。成長はしている。そう思えた一方で、怪物ルーキー・笹生とのグリーン上の差が如実に出た。
「練習のときから、たとえ2mオーバーしても“ナイストライ”と意識づけしてカップを超えることをやってきました。ですが、試合になって小祝さんの“ショート癖”が、笹生さんと対になることで余計に目がつきました」
もっと積極的に打っていかないといけない。そこである取り決めをした。「7歩以内は積極的に狙う、それ以上ならあきらめてもいい。そうやってメリハリをつけました」。攻め時は、今まで以上の「ネバーアップ、ネバーイン」(届かなければ入らない)の精神を求めた。
それが結果として出たのが、ゴルフ5レディス。特に最終日は圧巻だった。3番からの連続バーディとなった4番の3m、3連続となった17番の3mといった7歩以内、そして8番で17m、15番では7mとロングパットもカップに届かせてベストスコアタイを叩き出した。
「流れを読み込むパットと切らないパットの両方とも決まっていました。その結果がトーナメントレコードであり、2位との6打差でした」
スタッツとしても成果は表れていた。ゴルフ5レディス3日間のパット数は3位タイ。そしてここまでの4試合のパーオンホールの平均パット数は5位(1.7416)と、昨年とは雲泥の差となっている。
それでも辻村氏は、まだまだといった様子。「今の時点で伸びしろの半分ぐらいです。中間点までたどり着いたかどうか。まだまだ上手くなる選手です」。師弟の飽くなき向上心は、さらなる高みを見据えている。
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、山村彩恵、松森彩夏、永井花奈、小祝さくら、吉田優利などを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。
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