今季初の4連戦となった「デサントレディース東海クラシック」は古江彩佳と東浩子の一騎打ちとなった。2人とも最終日はノーボギー。例年の新南愛知CCでの戦いにはあまりないバーディ合戦というよりは“ボギーを打たない”戦いに。そんなプレーオフまでもつれた一戦は、プラチナ世代に軍配が上がった。
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優勝会見で古江は言った。「後半に入って、プロ初優勝ということを意識してから緊張して体が動かなくなった」。その言葉通り、サンデーバックナインで奪ったバーディは最終18番のわずかに1つ。それも約18mの超ロングパットを決めてのものだった。
今回感じた緊張感は昨年アマチュアで優勝した「富士通レディース」ではなかったものだった。「去年は淡々というか、獲れるところで獲れていたので、攻めるだけかなという気持ちでできました」。優勝を意識せず目の前の1打に集中する。焦りもなく、周りも関係なく伸び伸びとできていた。
だが、今回は違った。同組の東との伸ばしあいになったこともあるが、「守らなければいけないけど、攻めなくてもいけない」と相手を見ながらのプレー。それはもちろん勝つ確率をより上げるため。自分がいいスコアを出すことよりも、相手よりも1打上回ることが大事なのだから。そしてシーズンという側面で見れば、賞金女王、シードなど賞金額の面も踏まえて戦わなければならない。この“勝負勘”こそ、まさに“プロ”の戦い方である。
真骨頂は15番だった。最終日の難易度は17番目と何としてもバーディを獲りたいパー5で、477ヤードと2オンも狙える距離。古江はここでティショットを右に曲げてファーストカットに入れてしまったが、前の組がグリーンでプレーして待っている間ウッドを持っていた。しかし、打つ直前でアイアンに変更。レイアップを選んだのだ。
「ファーストカットでボールが沈んでいたということもあり、フェアウェイウッドなら狙えたかもしれませんが、危険な選択をする必要がない場面でした。そして先に打った東さんもレイアップしていたので安心というか、同じようにしようと考えました」
つまり、相手の出方を見て戦法を変えたということ。簡単に話しているが、なかなかできることではない。最近は「自分のゴルフに集中する」、「目標スコアだけを考える」とスコアボードを見ない選手が増えた。もちろん、結果がすべて。自分が勝てるやり方でやればいい。だが、相手のスコアやプレーを見てどう攻めるかを考えるほうが、戦い方に幅も出る。一方で、相手を見ることでのリスクも少なくない。今回、古江を襲った“緊張感”もその1つだろう。
プロコーチの辻村明志氏は、古江がこういったプレーができる理由として総合力の高さを挙げた。「弱点がなく、ゴルフの完成度が非常に高い選手なので、意識を相手やスコアに持っていけるのだと思います。低ければ自分のことで精いっぱい。流れを読む余裕も生まれません」。スイングの安定度、ショートゲームの精度の高さ…。技術面に不安がないからこそできる芸当ともいえる。
優勝会見で「後半になって緊張してしまったのが悔い残る。今回の経験を生かして変えていけたらいい」と話した通り、まだまだ盤石な戦い方とは言えない。このパー5も確実にパーをとることはできたものの、バーディとはならなかった。緊張感を乗り越えること、そして相手を見て戦ううえでの勝負どころでの精度はもっとブラッシュアップできるはずである。それができるようになったとき、いよいよ賞金女王や世界が見えてくるだろう。だが、20歳にしてこの完成度と伸びしろ。やはりプラチナ世代で最初に複数回優勝を達成した実力は伊達じゃない。(文・秋田義和)
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