どれだけプロのプレーを見てもらえるか。これは女子ツアーに限らず、どのツアーでも常に最優先事項にある考え方のはずだ。ゴルファーであれ、ノンゴルファーであれ、ファンを増やさなければツアーは成り立たない。
今回はゴルファーに限った話をしたい。コロナ禍で、ゴルフを楽しむ人がじわじわと増えている。他のレジャーを楽しみづらかった間、広い空間を少ない人数で使う感染リスクの低いゴルフを選ぶ人が多かったからだ。20代の若いゴルファーをコースで見かることも増えた。練習場は言うまでもない。若者だけでなく、ウイルス感染後のリスクがさほど高くない年齢層にも、ゴルフの良さは広がっている。
筆者の身の回りでも、そんな状況を肌で感じることがいくつか起きている。「1度はゴルフをやってみたいんだけど」と相談される。「1人で練習場に行ってみたいけど、クラブはどれを選べばいい?」とも聞かれる。「プロとプレーをしてみたい」という人だっている。2、3度コースに出た若者も「他にもやりたい友達がいるんだけど」と、友達を誘おうとしている。
ひとたびコースに出ればその美しさに感動し、ボールがしっかり当たった時の爽快感の虜になる。先輩ゴルファーのいじわるや知ったかぶりなどでイヤになることがなければ、こうしてゴルフに夢中になる人は多い。そして、こういう人たちのできるだけ多くにプロツアーの魅力を伝えることができれば、将来は安泰だ。どうすればいいのか。
例えば、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)には、ツアーだけでなくティーチング部門もある。そのレッスンに来た人たちを、1人1回限定でツアー競技に招待するというのはどうか。ビギナーはさらに優待するなど、とにかく試合会場に足を運んでもらうことができれば、楽しみ方がわかり習慣もできる。応援する選手ができればさらに盛り上がる。
コロナ禍で無観客開催の現状では難しいが、通常なら決して難しい話ではないだろう。トーナメント部門とティーチング部門がうまく歯車をかみ合わせ、ゴルフの底辺拡大ができるはずだ。
またゴルフショップと提携して、クラブを買ったときに試合に招待するといった方法をとることもできる。ツアー開催地の小中学校の生徒を招待する試合もあるが、その規模をさらに広げるのはどうだろう。授業の一環で試合に来る子供たちの規模を市町村全体に広げる。都道府県単位でも希望者を呼ぶ。大学のサークル単位は、ゴルフだけでなく他の競技にも手を広げ、ボランティアなどで参加してもらうのもいい。
バスツアーのようなものを増やせば、遠足気分でやって来る人が大人も子供も増えるだろう。地域の子供会、青年会、婦人会、老人会などにも気を配れば足を運びやすくなる。老人施設のレクリエーションやリハビリとして来てもらうのもいい。プレー以上に老若男女が試合会場に集まるのが理想形だ。
コロナ禍がもたらした思わぬ恩恵であるゴルフ場の活況、これを逃す手はない。自粛生活の反動で自然の中に出かけたいという人々の希望を、うまくとらえるチャンスにすればいい。ツアーの将来につなげるための方策は、いくらあっても多過ぎることはない。(文・小川淳子)
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