<TOTOジャパンクラシック 最終日◇8日◇太平洋クラブ 美野里コース(茨城県)◇6554ヤード・パー72>
前日の夜に雨が降ってグリーンが柔らかくなった影響もあり、バーディが乱れ飛ぶ戦いとなった「TOTOジャパンクラシック」。激戦を制したのはトータル19アンダーまで伸ばした申ジエ(韓国)だった。
誇らしげに優勝カップを掲げる申ジエ【大会フォト】
前半は苦しんだ。ショットは好調でチャンスにつくが、パッティングを決められない。そうしているうちにも後続が押し寄せてくる。「焦りはありました」。最終日に2位スタートながらも、スコアを落としてV逸した前週の「樋口久子 三菱電機レディス」のような悪い流れとなっていく。
だが、2週連続で同じ過ちを繰り返さないのが元世界1位。「7番でパッティングのリズムが悪くなっているのが分かりました。力んでしまっていて、テークバックでインに引きすぎていました。真っすぐ引くようにしたら良くなりました」。
この修正力でバーディを重ねていくと圧巻は17番パー5。「ボードを見たら笹生(優花)さんに追いつかれているのが分かりました。バーディ以上は絶対に獲らないと」と気合いを入れたこのホールで2オンに成功すると、16メートルを沈めてイーグルを奪取。迫りくる若き大砲を振り切ると、18番でも自分を祝うかのようにバーディ締め。大会3勝目を今年の「デサントレディース東海クラシック」の古江彩佳に続く史上9人目のノーボギー優勝で決めた。
最終日となった8日は17年前、不慮の事故で亡くなった最愛の母・ソンスクさんの命日だった。「いつも一緒にいてくれていると思っています。一緒に優勝したかった」。強い思いを胸に、この日は全身黒のウェアで喪に服してプレー。「絶対に勝ちたかった。(母のことを)考えすぎると心が弱くなると思って、強い気持ちで戦いました」。難しい精神状態をうまくコントロールして、“2人”でトロフィーを勝ち取った。
もう一つ、ジエに強い気持ちを授けたのが、昨年契約を結んだ太平洋クラブでお世話になっている人たち。今年は同コースでの開催とあって、ホステスプロとしていい姿を見せたかった。「プレッシャーもありましたけど(笑)、感謝したい気持ちが強かった」と見事最高のかたちで恩返しを決めた。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で来日が遅れ、今大会で日本ツアー5試合目だが早くも2勝目となった。「日本ツアーが開幕してから早く試合に出たい気持ちもありましたが、今こうしてプレーができているのでもありがたいくらいです」。この勝利で賞金ランキングは5位に浮上した。「今シーズンは特別長い。体のコントロール、リカバリーが大事になってくると思います。20歳前後の選手が強いですが、30代も頑張っています(笑)」。14年に日本ツアーに本格参戦してから手が届きそうで届かない韓国、アメリカに続く3カ国目の賞金女王へ、一気に弾みをつけた。(文・秋田義和)
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