最終日のバックナイン、終盤に松山英樹が粘りを発揮し16、17番で4〜5メートルのパットを沈めて連続バーディ。首位と一打差に迫ると松山に大歓声があがり「ヒデキ! ゴー!」の声に押されたのだろうか、松山は右手で力強くこぶしを握りしめた。
「ビビント・ヒューストン・オープン」は6月にツアー再開後、米国内では初の観客動員。一日2000枚のチケットが一般販売、500枚がスポンサーや家族へと配られたので計2500人がコースに入場した。米国内初というのは前週に「バミューダ選手権」で約500名の入場があったからだ。
ファンも待ちわびていたのだろうか、初日から多くのギャラリーがヒューストンダウタウン近くのメモリアルパークGCへと集まった。初日は早朝のスタートだった松山は「僕の組にはほぼギャラリーはいなかったけれど、日本人も3〜4名いて『ああ、ギャラリーが入ったんだな』と感じた。やっぱり歓声はやりがいになる」と喜んだ。
午後にはフィル・ミケルソン(米国)がジェイソン・デイ(オーストラリア)らとスタート。ティは人垣で覆われた。
ミケルソンは元々ヒューストン・オープンに参戦予定だったが、「マスターズ前に感染リスクを負いたくない」と替わりにシニアのPGAツアー・チャンピオンズへの参戦も考えたが、結局ヒューストン・オープンへの出場を決めている。ところが、この人数のファンに囲まれているミケルソンを見ると、不安を感じるのも仕方ないことだろうと実感した。
2500名というのは少ないのか多いのか、新型コロナウイルス感染拡大がなければ1万人のチケットが販売されたのだというが、実際にコースに出ると思った以上の人の多さを感じた。マスクは着用義務となっているが、飲食をするときは外してもよし。週末ともなると多くのファンがビールを片手に観戦、声援とともにヤジも飛び交うシーンもあり、「しばらく聞いていなかった声だから、とても懐かしかった(笑)。やっぱりファンの前でプレーできることは最高にうれしい」とコロナ感染から復帰したダスティン・ジョンソン(米国)。選手たちの声は概ねファンを迎えたことを喜んでいた。
「もし選手からたくさん感染者がでたら、ファンが入ったからということになるけれど、でもファンの前でやれることは選手にとってもすごく楽しみなこと」と松山英樹は前向きに捉えると、「ヒデキー」と声をあげるファンにボールを投げ込むシーンもあった。
最終日、優勝したカルロス・オルティス(メキシコ)が最終18番でバーディパットを沈めると、その歓声は練習グリーンにいた松山まで届き、負けを知る報せになってしまった。
観客動員でも大会は無事に終了。感染拡大などなく、少しずつでもファンが戻ってくることが実現する第一歩になればと願う。(文・武川玲子=米国在住)
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