女子ツアーの命運を握る6期(11年目)の小林浩美体制がスタートすることが決まった。
日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)は、22日、次期理事選挙の結果を発表した。時節柄、オンラインと郵便のみで投票の結果、8人の理事候補のうち、小林、浅田真弓、小田美岐、寺沢範美、松尾貴子、松尾恵、森本多津子の7人が当選した。落選したのは飯塚由美子。新体制は3月15日の社員総会の承認を持って発足する。
理事の互選により、小林が次の会長候補に選ばれており、他の6人のうち小田以外の5人も再選。「いま進めているもの。2013年からの中期計画に発展できるように、取り組んでいる目標に向けて実現したいです」と、小林現会長は、これまでの路線を踏襲することを宣言している。
気になるのが、放映権と主催権の問題だ。放映権についてはJLPGAが持つ方向で各主催者と3年半前から交渉が続いている。今年に入ってから、将来的にすべての試合の主催権もJLPGAが持つ方向で各大会主催者との交渉を始めている。だが、これについては触れず「お話しできる段階になったら」と言うにとどまった。ディスクローズを嫌う体質は変わっていないようだ。
ツアーがすべての試合を主催して放映権を持ったうえで、それぞれに特別協賛などの形でスポンサーがつくのは、ツアーのあるべき姿。だが、日本では歴史的に、ツアー確立以前からの形が続いてきてしまっている。それぞれの主催者が「うちの試合」という意識を持っており、それをツアーが公認する形だ。これを改革し、ツアーが全体をコントロールすることができれば、今年のような緊急事態でも、日程も含めてフレキシブルに対応しやすい。さらに、開催地をまとめて“北海道シリーズ”“九州シリーズ”などという形も取れる。しかし、現状ではそれもままならない。
要するに、現体制が進めようとしている方向性は素晴らしい。しかし、新しい形での権利関係などについては曖昧なまま話をし、相手の話に耳を傾けず、言いたいことだけ言って終わることが多いという実態がある。そのため「あんなのは交渉じゃない」と、信頼関係が失われている相手も少なくない。説明が曖昧なままの主催権委譲依頼には「口を出さずに金だけ出せって話?」という声があちこちから聞こえて来ている。
くどいようだが、主催権を持ち、放映権料を取り、協会を守り、選手に還元する。プロスポーツ団体のあるべき姿を主張するのは当然のことだ。一方で、旧態依然の仕組みを変える改革は、勢いのある時にしかできない。1999年に同じことを目論み、日本ゴルフツアー機構(JGTO)は日本プロゴルフ協会(PGA)から独立した。だが、景気が悪化し、男子ゴルフの人気も下がってきているというタイミングの悪さもあり、そのままずるずると今日に至っている。当初の目的はほとんど達成されないどころか、選手が置かれた状況は厳しさを増している。若手がどんどん台頭し、個々の人気は上がってきているのに、試合が今一つ増えないからだ。
コロナ禍においても、女子ツアー改革のタイミングとして、今がチャンスなのはまちがいない。交渉相手である各主催者側も世代交代が行われ、変化を受け入れる状態のところも増えてはきている。それなのに、話がうまく進まない理由を、根本から考え直す必要がある。
プレゼン能力を含めた交渉力、実現力が見えず、足りないこと。自分たちが全くリスクを取らずに権利だけを手にしようとしていること。さらには、会員=プロも含めた関係者への説明が全く足りていないこと。これらをひとつひとつ解決していかなければ、まとまる話もまとまらない。
コロナ禍で試合数が少なくなったこと、制度改革によってQTすら受けられない選手が増えたことなど、様々な事情により、今年はツアーとは別のイベントがたくさん行われた。プロアマ形式のものもあれば、そうでないものもある。テレビでなくても、ウェブで様々な発信ができる時代を楽しむファンもいる。そんな中で、選手にとっても、スポンサーにとっても、ツアーが最高の舞台であり続けるためには、長い目で見て何をどうするべきなのか。
長期政権に入った小林新体制がツアーの価値を守り、ティーチング部門を含めたJLPGAを磐石なものにできるかどうか。今回は特にそれが問われている。まずは、風通しのいい理事会、そして会員とのコミュニケーション。さらには外部に対する聞く耳を持つこと。大きなカギを握っていることだけはまちがいない。(文・小川淳子)
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