コロナ禍の中で終えた2020年は、世界各ツアーが中止、中断、延期を余儀なくされた。試合数こそ少ないものの、今年も各試合でさまざまなドラマが誕生。その中から印象に残った名場面を、現場カメラマンが選定した。今回は松山英樹の“幻”の首位スタートを撮影した岩本芳弘カメラマンが、コロナ初期を回顧する。
いまでは、ラウンド終了後に同伴プレーヤーと握手をする光景はない。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、当たり前に行われてきたことがツアー現場からも消えた。その一つが“握手”だと岩本カメラマンが振り返る。
3月、コロナが世界的に流行し始めたとき、米国フロリダ州にいた松山英樹が「ザ・プレーヤーズ選手権」の初日を9アンダーでスタート。大会コースレコードのビッグラウンドに現地も沸いた。そして、そこで松山の快進撃を撮影していたのが岩本カメラマンだった。
「その週もプロアマ中は子供達と触れ合い、たくさんのギャラリーに応えていました。ホールアウト後には握手。でも今まで当たり前であった光景がこの日を境に無くなりました」
1日何万人も動員するPGAツアーの熱気は、このプレーヤーズ選手権初日が最後となった。2日目以降の中止が発表されると、松山の首位発進は幻となり、その後は6月まで全日程が中止という異例の事態に追い込まれた。
ツアー再開後もごく一部の大会を除いては無観客開催が続いている。「いままではたくさんのギャラリーのおかげで雰囲気のある素敵な写真になっていた事もあるのですが…。いまは背景にほとんど人はいない」という違和感を覚えながらの撮影が続いている。
それでもカメラマンとして伝えたいものはたくさんある。「いろいろな映像があふれる中、瞬間、瞬間を捉える写真の力はまだまだ大きい。だから何かできることはある。このような時代になったからこそ、1枚1枚の写真で選手が表現している姿をしっかり捉え、見た人がホッと笑顔になるような写真を撮っていきたい」と岩本カメラマン。
2021年はどうなるのだろう。「またいつかゴルフ場に人があふれる光景を見るために、まずは自分が出来るところから。頑張ろう」。
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