世界で50勝以上挙げ、海外メジャーは2勝。米韓で賞金女王に輝き、世界ランキング1位となったこともある申ジエ(韓国)。2020年もわずか8試合の出場で2勝を挙げるなど今なおバリバリの実力者だが、その一方で、日本ツアーを愛し、常々「若手の壁になりたい。後輩達に多様な技術を見せるのも私の役目」と話すツアー全体の発展を願う選手でもある。そんなジエに、日本が誇る若手選手たちをどう思うか聞いてみた。
今回は20年から米国女子ツアーに参戦している河本結。7月の「LPGAドライブ・オン選手権」で4位に入るなど、初年度とは思えない活躍を見せた一方で、カメラの前でおもわず弱音を吐いてしまうなど自信を失ったシーンも見られた。様々な困難とぶつかりながら、異国の地でタイトルを目指す22歳はどう映るのか。
河本について開口一番、「アメリカに行ってチャレンジしていることをとても高く評価したいです。褒めてあげたいという気持ちです」と挑戦する姿勢を評価したジエ。「恐れずにチャレンジして、自分のなかで焦りも出るかもしれませんが、結果を早く出そうとせずに。1つ1つしっかりこなして、活躍して欲しいですね」。日本という帰るべき場所で見守りながら待っています、と付け加えた。
ここまで応援するのも、アメリカでのつらさを知っているから。「向こうでいちばん障害になることは寂しさです。本当に孤独な戦い。アメリカは本当に広くて、ゴルフしかありません。ゴルフ三昧、ゴルフ漬けになってしまうんですね。さらに自分の落ち着けるような家もないので、休みもしっかり取れないし余裕も生まれてきません。彼女が向こうでその大変さを外に出さずに、楽しそうにやっている姿を見るたびに本当に偉いなと思います」と賛辞を贈る。
では、ジエはその逆境をどうやって乗り越えたのか。「寂しさを感じないようにするために、より忙しくしました」。ひたすらに練習に励んだのだ。ジエの言葉を借りれば「雑念が起こるようなスキを与えない」。それがケガにつながったこともあったというが、ストイックに自分を追い込むことによって、孤独であることを消し去った。もちろん、それが世界ランキング1位につながったのは言うまでもない。
プレー面では、河本の感情のままに表現するところが米ツアーに合っていると話す。「アメリカツアーは喜怒哀楽がハッキリしていて、それをうまく表現する選手が多い。彼女が楽しんでいる気持ちを、向こうではよく受け入れてくれると思います」。それが、先ほどのつらさ軽減にもつながるとも。「自分の楽しさを表現することで、自分の寂しさを慰める効果もあると思いますよ」とアドバイスを送った。
申ジエ(しん・じえ)
1988年4月28日生まれ、韓国全羅道出身、スリーボンド所属。155センチという身長で母国韓国、そして米国の賞金女王に輝いたジエが、日本ツアーを主戦場に移したのが2014年。「温かい人間味を感じる国でやってみたい」というのが理由で、本格参戦後は元世界ランク1位の名に違わぬ実力でカップを積み重ねている。また、たびたび児童施設に寄付するなど人格者としても後輩たちの良い手本に。米ツアー時代は最終日に無類の強さを発揮することから“Final Round Queen”と呼ばれており、日曜日の強さは日本になっても変わることはない。
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