2020年12月22日(火)に行われた日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の理事候補者候補選任選挙で当選し、3月15日(月)の総会を経て3度目の理事となった小田美岐。なぜ、3度目となる理事に立候補したのか。そして、どのような協会にしていきたいのか。じっくりと話を聞いた。
――まずは、なぜ立候補されたのでしょうか
元々、選挙改革委員という役職をやっていて、オンラインで投票できるようにしたり動いていました。選挙改革委員は理事に立候補できないこともあって、最初はするつもりはありませんでした。協会を外から見ていると、関係がうまくいっていないといわれているところとも向いている方向は真逆ではないと思っていて。うまくいきそうなのだから、と私は外からサポートしているつもりでした。そうして選挙の準備を進めていました。
そのなかで副会長を務めていた原田香里さんが20年度をもって辞められるということだったので、立候補者がたくさん出ると思っていたんです。ただ、なかなか出てこないのが実情でした。そのころから塩谷育代さんに「やってもらえませんか」と言っていただいて、「塩谷さんは?」と聞いたらご家庭の都合上なかなか難しいと。すごく納得する理由でしたので、それならば、という気持ちもありました。
また、自分で言うのもなんですが、私のやり方はどちらかというと正面からではなく、わきからネゴシエーションして、少しずつ進めていくほうなので、その感覚のある人が協会に必要なのかなと。私ができるかできないかは分からないですが、そういった部分を生かして協会を前に進めなければという気持ちがありました。今、頑張って活躍している若い選手たちはいいんです。賞金を稼いでいますし。でも、渋野日向子さんたちの活躍をみて、ゴルフを始めた子たちが大きくなったときに「協会はもうありません」ということではだめ。私たち世代の責任は重い。何とかできないものかなぁと思いました。
――理事になるのは3度目。経験を生かせる部分はどのあたりでしょうか
一回目は本当に若いころで右も左も分からず「協会はこういうことをしているんだ」という感じでした。2度目は樋口さんが初めて会長になられたタイミングで、諸岡さん(女子ゴルフをメインとする大会PR、広報を担う株式会社MCPR代表取締役の諸岡誠彬氏※当時》に手伝っていただきながら広報の強化に取り組んでいました。そして鈴木美重子さんに引き継いでやっていただいて、ある程度うまくいっていると思っていました。
ただ、美重子さんが定年で辞められたあと、広報に強い人があまりいなくなったのかなと感じていました。私自身も諸岡さんに教えていただくまではテレビ・新聞・雑誌、各メディアが一緒だと思っていて、ほしい情報などが違うことをよく分かっていませんでした。その後、テレビの解説もやっていましたから、そういったことを経験上、分かっているので、そのあたりは生かすことができるのかなと思います。私が選手のころからいらした記者やカメラマンの方もいまだにいて(笑)、私の顔を知っている方も多いので、そこはやりやすいのかなと思います。
――理事として女子ゴルフ界をどうしていきたいですか?
ゴルフというスポーツがどんどん“見るスポーツ”になっているなという危機感があります。ゴルフを好きな人にとっては、女子ゴルフはすごく人気があって、すごく華やかなものですが、アンチゴルフという人もはまだまだたくさんいる。「お金持ちの道楽」、「偉そうな人たちばっかりやっている」というイメージを払しょくできていないように感じます。
もちろん、「ゴルフはコンサバティブなもの」という考え方の人もいて、それはそれでいいのですが、敷居を下げるというか、アメリカのように安価で一日遊べるような裾野の広がりみたいなのをゴルフ界全体が考えていかなければいけないと思っています。二極化といったらおかしいですが、もっと簡単にできるスポーツにしないといけないという思いですね。そのためにも目に見える社会貢献が必要だと思っています。
例えば日本の女子ツアーでは、ピンクリボン運動をずっと続けていますがいまだに目に見えないように感じます。一方でアメリカでは、例えば土曜日はピンクリボンの日として、何かピンクのものを身に付けるなり持つなりしましょうという活動をしていました。そうやって「みんなで社会貢献をしているんだよ」という空気感をもっと持ちたいですね。
そういったトーナメント会場のチャリティ活動は私が選手のころからやっていて、当然ですけど試合に出ている選手にとっては負担がかかる部分もある。だけど、その負担までも外の人たちに伝わっているかというとまだまだです。色々やっているんだよっていうことを、自分たちで言うのではなく、思ってもらえるような見える化をしていきたいですね。変な風にとらえられないように、あざとくない見え方をしていきたいなと思っています。
当然ですが、色々な活動を行うためには原資が必要。協会としてもお金を生んでいかないとできないと思っています。世界情勢は去年、一昨年から大きく変わってきている。単にトーナメントも広告的な露出だけでなく、営業利益以外でもグローバルにこれだけ貢献していますという会社としての方向性が求められていると思います。そこに「私たちもそうなんです」と一緒になってやっていけるような協会になりたいなと思います。
――最後に新理事としての目標をお聞かせください
今までお話した部分は長期目標で、最終的にそうなりたいですね。近いところでは、今、小林浩美会長が進めているコンテンツ事業の拡大、そこに関連する広報の部分をさらに強化していきたいですね。そして、選手たちをピラミッドで考えたときに、上のほうの稼げる人たちがでてくるほど、下の裾野の部分は広がっているので、その人たちをどうするのかも課題になってくると思います。
また、今ツアーで活躍しているのは宮里藍さんチルドレンたち。そして今後は渋野さんをはじめとする黄金世代チルドレンたちが中心を担うでしょう。そうなったときに私たちのやってきたことを引き継いで宮里さんたちに協会の会長であったり、そういった職務を担っていただきたいですね。日米の経験はもちろん、ギャラリーの子どもたちへの対応だったり素晴らしい方ですから。そういった懸け橋になれたらと思っています。
小田美岐(おだ・みき)/1959年4月5日生まれ、京都府出身。通算6勝。ティーチングプロフェッショナル資格A級も保持している。現在は解説者として国内女子ツアーだけでなく、米国女子ツアーの解説を務めることも多い。21年3月からは日本女子プロゴルフ協会の理事に。その手腕に期待がかかる。
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