いよいよ開幕を迎える2021年シーズンのステップ・アップ・ツアー。あす23日から2日間の日程で開催される「ラシンク・ニンジニア/RKBレディース」からシーズンが再開。そこで同ツアーを放送するCSチャンネルのスカイAで16年からラウンド解説を行う下村樹美プロに見どころを聞いた!
■遅咲きのコツコツタイプ・小川陽子と19歳の韓流プロに注目
レギュラーツアー同様、ステップも20年と21年が統合。昨年はコロナの影響で開催されたのは8試合。そして今年は14試合が予定されている。現在の賞金ランキングを見てみると、昨年、6試合に出場し2勝を挙げた韓国の19歳、リ・ハナがトップ。そして、そのハナを植竹希望が追いかける展開だ。
その植竹は1998年度生まれのいわゆる黄金世代の一角。レギュラーツアーでは9人がすでに勝利をつかんでいる黄金世代だが、植竹はステップの戦いでまさにステップを踏んでいる1人。「ダントツで注目は植竹選手です。パー4の平均スコアが『3.87』で1位。パー4でこの数字はなかなかありません」と、そのポテンシャルの高さはずば抜けている。今年はレギュラーツアーでの参戦も多くなる見込みで、ステップで開花させた才能をいかんなく発揮することになりそうだ。
今大会、植竹はレギュラーツアー出場のため欠場するがリ・ハナは出場。現在の部門別数字を見ると、パーオン率3位、平均パット数4位など、穴がない選手。「派手さはありませんが小柄ながらスイングもしっかりしていて、いつレギュラーに行ってもおかしくないイメージです。韓国人選手は何か特別に秀でているよりも、すべてにおいてレベルが高い選手が多いのが特徴です。例えば申ジエ選手やイ・ボミ選手も小柄ですが、穴がありません。ゴルフに対して、頭を回転させるのがうまいと思います」(下村)。
そんな賞金ランキングトップ2を追う選手の中でも、下村が注目するのは、同6位の小川陽子。昨年は6試合に出場しトップ10が4回。開催時期がズレ込んで行われた本大会では、優勝した植竹についで1打差の2位タイに入った。「大輪の花を咲かすというよりも、コツコツ頑張っている選手。年々レベルが上がっていますし、今年こそはと応援もしたくなりますね」と、32歳の遅咲きの活躍に期待する。
小川の部門別数字を見るとパーオン率は77%超えで2位。平均ストローク4位、平均バーディ数5位。「全体的な安定していますが、ショートゲームをどこまでこのオフで仕上げてきているのか。それ次第では優勝争いでも勝ち抜ける力を持っているというのが小川評だ。「性格はすごく優しいんです。朗らかでかわいらしいイメージ。でもプレーに入ると淡々と黙々とやるタイプ。周りではなく、自分のプレーと向き合っている。ゴルフって自分との戦いなんだなと思わせてくれるような選手です」。ショットメーカーだという小川の安定したプレーにも注目したい。
また、「明治安田生命レディス」でともに復活を予感させるゴルフを見せた奈津佳、琴音の堀姉妹も出場。「本来ならそのままレギュラーツアーにいてほしい選手ですね。そのまま駆け抜けてほしい。注目姉妹です」と、こちらも初戦の見どころの一つになりそうだ。
■21年初戦の舞台はレギュラーツアーも開催 特徴は“砲台グリーン”
今大会が開催されるのは福岡県にある福岡カンツリークラブ 和白コース。60年以上の伝統を誇るコースは、玄界灘も誓い住宅街のなかにたたずむ名コース。丘陵コースらしくアップダウンも多く、「フェアウェイもタイトですし、飛距離よりも正確性が求められるコースです。大きな特長は砲台グリーンです」と下村。グリーンを狙うショットが打ち上げになることも多く、「海が近く、風が出れば難易度は上がります。特にINコースは高い球でグリーンに止める技術が必要です」と分析する。
昨年大会では植竹が2日間トータル10アンダーで優勝。植竹はシーズン通してのパーオン率が80%を超えるショットメーカー。「飛距離が出る選手だけでなく、100ヤード以内の距離も大事で、砲台グリーンのため縦距離の精度がポイントになってきます。そこが高ければバーディチャンスにつきやすいので、スコアも出やすい」と下村。バーディ合戦になる可能性は高そうだ。
ただし、昨年は夏開催だったこともあってスコアが伸びたが、今年は例年通りの3月開催。「芝がまだ立っていないなかで、どれだけ正確なショットでグリーンを狙えるか。そこもポイントです。和白はメリハリのあるコース。パー5、パー3で攻めて、バーディを獲ることが上位争いのカギです」。レギュラーツアーの「ほけんの窓口レディース」も開催する同コース。歴代優勝者には鈴木愛、インビー・パーク、イ・ボミ、申ジエら、やはりショットメーカーが名を連ねる。戦略性高い和白を制するのは?
■ステップ・アップ・ツアーで文字通り“ステップ・アップ”
昨年の6試合のうち、植竹、リ・ハナ、石川怜奈、小野祐夢のように、初優勝者が増えているステップ。「ステップの選手の技術や経験は年々高くなっています。技術面が高い選手のショットコントロールや、バーディを量産する選手のプレーも増えています。最近はJLPGAが攻めさせるセッティングにしているので、ハイレベルなバーディ合戦になることが増えています」と勢いも大事。特に2日間大会では、ビッグスコアでの大逆転もたびたび起こる。
「ステップのおもしろいところは、前の週まで悩んでいても、次の週になると何かをつかんだのか、いきなりビッグスコアが出せるということがよくあります。例えば3年前の河本結選手は、プレー中に試行錯誤しながら、考えながら18ホールを回っていました。そういうのが選手の力となっていきます。河本選手は翌年ブレイクしましたが、ステップの戦いがあったからだと思います」。ステップで4勝、そして翌年にはツアー優勝、今は米ツアー挑戦と、まさにステップ・アップを果たしている。
ステップはひと組に対してキャディがひとり。いわゆる帯同キャディが許されていない。そのため、選手自身の考える力がより研ぎ澄まされていく。「いかに自分の考えをプレーに生かせるか。自分のゴルフと向き合ってスコアにつなげるか。そういう点で見てもステップはおもしろいと思います」。
21年初戦から、ステップ・アップを果たす選手たちの熱い戦いげ繰り広げられる。
解説・下村樹美(しもむら・じゅみ)
1988年5月13日生まれ、愛知県出身。2011年にプロテストに合格。ケガなどもあり一線からは身を引いたが、16年からはスカイAでラウンド解説をしている。プロ目線での解説が好評。今年もステップ・アップ・ツアーで選手のプレーを見る。
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