渋野日向子の全英女子オープン優勝に加え、松山英樹がマスターズ優勝と、近年まれに見る熱狂を見せているゴルフ界。そしてここにも、「俺も負けられない」と次なるヒーローの座を狙い闘志を燃やす若手がひとり―― 初優勝を目指す阿久津未来也だ。
インパクトのある名前に見覚えのある方も多いのではないだろうか。読み方は“アクツ・ミキヤ”、字面が似ている堀川未来夢は日大ゴルフ部の先輩だ。そして、目指すはレギュラーツアー初優勝。トップレベルの技術を身につけるために訪れたのが、日大ゴルフ部の先輩、内藤雄士コーチのもとだった。丸山茂樹の米ツアー3勝をサポートしたカリスマコーチは、どんな金言を授けるのか!?
■本日のミッション『下半身を鍛えるって、具体的に何をすればいいですか!』
飛距離アップのためには、下半身の可動域を広げること!とアドバイスをもらった前回。実はちょうど、下半身の強化を課題のひとつにしていたところだった。
ミキヤ「トレーナーからは、腸腰筋(ちょうようきん・上半身と下半身をつなぐ筋肉)が女子並みだねと言われています…(笑)」
腸腰筋とは、いわゆる“インナーマッスル”と言われることも多い部分。新しくトレーナーをつけて、鍛え直している真っ最中だった。たしかに下半身の強化は重要!とはよく聞くものの、効果的なトレーニングはどう行えばいいのだろうか?
内藤「米国では、どのスポーツでも機能解剖学に基づいたトレーニングが行われているんだよね。単に足を太くする、お尻を大きくするじゃなく、それを使いこなしながらパワーを上手く伝達することを目標にしている。それがゴルフ界にも数年前から入ってきて、サンダー・シャウフェレやキャメロン・チャンプなどが良い例で、股関節をものすごく使っている。阿久津クンに足りないとしたらその部分だね」
ブルックス・ケプカ(米国)など世界の飛ばし屋を見てみると、トップで正面から右肩の肩甲骨が見えるくらいに上体を回している。そのときに右の股関節にしっかりと上体を乗せて、そこから左の股関節を思い切り伸ばす動きが見られる。身長180センチと長身のミキヤが、体を効率よく使うために「ぜひ、これもやってみて!」と内藤コーチが教えてくれたのが、棒を担いだ“コサック・スクワット”(勝手に命名)だ。
やり方は以下の通り。
1.両脚を大きく広げて立ち、棒を方にかつぐ
2.そのまま腰を落とす
3.そのまま、右足に体重を移動して、伸脚のように左足を伸ばす
4.次は左足に体重を移して、右足を伸ばす
5.このとき、腰の位置が2.の位置から上がらないように注意!
“コサックダンス”に似た動きのトレーニングだが、通常のコサック・スクワットとは異なり、腰の高さが上がらないようにするのが中々ハード。
ミキヤ「うわっ、じんわりときますね。腸腰筋と中殿筋(おしりの横の筋肉)が鍛えられる感じがします…!」
内藤「棒を担ぐのは、バランスを取りやすくするためです。もう少し骨盤を前傾させて行うと、さらに股関節を使えるようになる。あとは、台やイスの上に乗って、後ろ向きで片足を上げ下げする動きも、中殿筋を鍛えられるよ(※写真参照)」
そして、股関節の動きをよくするためのトレーニングをもうひとつ。
内藤「重りを持って、挙げながら立ち上がる動きをやってみようか」
ミキヤ「あ、これは普段からやっています!けっこうメジャーなトレーニングですよね」
ちょっと余裕かに思えたが、内藤コーチのやり方は、さらに負荷の重いものだった…!
1.両脚を大きく広げて、重りを両手で持つ
2.腰を落としながら、重りを両脚の間に下ろす
3.このとき、お尻を後ろに突き出すように深く腰を落とすこと
4.そこから、背中が真っ直ぐになるまで、重りを振り上げながら立ち上がる
内藤「お尻を使って、ポンと立ち上がる。中殿筋が弱かったり、股関節が伸び切らないと上手くできない動きです」
背筋が伸びるまで体を起き上がらせるのが、意外と難しい。プロゴルファーにとって、前傾姿勢をキープすることが当たり前。お尻の筋肉を使って起き上がることを意識することで、下半身を効率よく使えるようになり、これが飛距離アップにつながる。
世界トップの飛ばしを誇るキャメロン・チャンプ(米国)を始め、海外のトップランカーに共通するのは股関節の使い方がうまいこと。ここを強化できれば、圧倒的な飛距離アップも夢じゃない!?
今回の収穫:
「世界の飛ばし屋は股関節の使い方がうまい!
ウェイトアップでなく、効率よく使えるトレーニングを意識しよう」
■阿久津未来也プロフィール
1995年3月17日生まれ、栃木県出身。
2016年にプロ転向、18年の「日本プロ」で自己最高の6位に入った。同年のQTで初めてファイナルに進出し、翌年はレギュラーツアーに本格参戦。賞金ランクは71位と、初シードにあと一歩まで迫った。
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