<中京テレビ・ブリヂストンレディスオープン 最終日◇23日◇中京ゴルフ倶楽部 石野コース(愛知県)◇6486ヤード・パー72>
前日ツアー記録に並ぶスコア「61」をマーク。後続に5打差をつける11アンダー・単独トップから最終ラウンドをスタートした稲見萌寧が、トータル15アンダーまで伸ばし今季6勝目をつかんだ。「前半は何があるか分からない状態。気は抜かず、差を縮められないように。きょうはボギーを打たずに回り切ろうと思っていました」。その目標通り、ボギーは“ゼロ”。最初あった2位との差は、終了時6打差に広がっていた。
「今回の勝ち方は初めて。ぶっちぎって、さらに差を広げて勝つというのは一つの目標で、それを達成できてよかった。でも競り合いのほうが自分の心が出る。ハラハラドキドキも楽しい」
初優勝を挙げた2019年「センチュリー21レディス」は、2打差の単独トップでスタートしたが、最終ホールにバーディを奪ったことで勝利が確定した。今季の「スタンレーレディス」、「明治安田生命レディス ヨコハマタイヤゴルフ」、「富士フイルム・スタジオアリス女子オープン」はプレーオフを制してのものだった。まさに“ハラハラドキドキ”を乗り越えての勝利が続くなか、ようやく大差をつけての圧勝を実現した。
ゴルフに関しては、自他ともに認める「完璧主義者」。奥嶋誠昭コーチは「いつも不安を抱えているから、練習量もすごい。今週も僕が『もう帰りたい』と思っていても、終わらなかった」と、普段の様子を証言する。今季23試合で6勝。今年に限って言えば12戦で5勝という勝率は、こういう姿勢から成し遂げられている。「もう少しショットを安定させたいですね。全部向上したいですけど」。ゴルフへの欲求は、どれだけタイトルをつかんでも尽きることはない。
そして、この勝利で目標の1つに近付けることにもなった。東京五輪出場権の基準になるロレックスランキング(世界ランク)で19ポイントが上積みされる。これで現在31位からのランクアップも確実となり、見込みでは現在日本勢2番手につける古江彩佳(25位)を抜くことになる。26位で同3番手の渋野日向子が、現在米ツアーの「ピュアシルク選手権」で上位争いを続けており、その結果次第にはなるが、今回の優勝で稲見が五輪出場権内に浮上する可能性も出てくる。
「オリンピックは日の丸を背負って、数少ない人しか出られない場所というイメージ。出場できたら名誉なこと」。こう話す舞台は確実にその視野に入ってきた。今年の初戦「ダイキンオーキッドレディス」終了時点での世界ランクは63位。驚異のペースで、ここまで駆け上がってきた。
「大事な時に結果を出せる人は強い。“ここ一番”で決められる選手が(日本代表に)なれる」。もちろん油断はできない、し烈な争いは6月まで続いていく。日の丸がついたウェアに袖を通すためにも、ここからも結果を残し続けていく。(文・間宮輝憲)
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