<資生堂 レディスオープン 事前情報◇29日◇戸塚CC(神奈川県)◇6570ヤード・パー72>
賞金総額3億円、優勝賞金5400万円のビッグトーナメント「アース・モンダミンカップ」で4年ぶりとなる勝利を手にした菊地絵理香。ツアー屈指の安定感を誇るショットメーカーは、「パターに助けられた」と出場者の中で2番目の数字となる4日間の平均パット数は「26.75」とグリーン上も制圧した。初日に首位に立って以降、後続に影をも踏ませぬプレーで完全優勝を飾っている。
菊地を優勝に導いたパターは今国内女子ツアーで大人気のテーラーメイドの『トラス』シリーズ。ただし、2021年5勝を挙げている稲見萌寧が使用する『TB1 トラスヒール』ではなく、シリーズの後継にあたる『TPコレクション ハイドロブラスト ジュノ TB1 ツアートラスヒール』。どちらも “三角形”のネックが特徴のパターだが、この2つは何が違うのか。そして何が菊地に合っていたのか。同社のツアーレップで主にパターを担当する小竹素史(しの・もとし)氏に話を聞いた。
両方のトラスの特徴としてあるのがヘッドとの接合面の“三角形”。これによりネックを面で支えることができるため、芯を外したとき、特にヒールで当たったときにもヘッドがぶれずミスヒットに強い構造となっている。初代『トラス』はその効果が発揮しやすく、視覚的にも分かりやすいように三角形が大きかったのだ。
だが、その三角形は人によっては、構えたときの見た目がどうしても違和感が出る。「特に男子プロの方は見た目を気にする人が多く、そこが投入にいたらない人も結構いました」と小竹氏。そういった声を踏まえてできたのが今回のモデルで、三角形の大きさが稲見のものと菊地のものでは違うのだ。菊地が使う新しいモデルは、そのやさしさを残しながら三角形を限界まで小さくしている。
「今まで使用していたパターを見ても、菊地プロはフェースを開閉して打っていきたいので、ピン型のクランクネックのほうがアライメントを取やすいタイプ。三角形が小さいほうが気になりづらくて、開閉するトゥの動きが入りやすい。でも、ショートパットのやさしさはある。だから、いい意味でアバウトに打てる。そういった部分が菊地プロにマッチしたのではないでしょうか」(小竹氏)
一方の稲見が使う初代『トラス』は、どういうタイプに向いているのだろうか。「稲見プロは、吊るように構えてヘッドを真っすぐ出していきたいので、ネックの見え方がそこまで気にならなかったのかなと思います。前のモデルはフェースバランスに近いような、真っすぐ真っすぐな動きをする」と同じトラスでもターゲットは異なる。つまり、マレット感覚で打ちたい人には稲見のモデルが合っている。
『トラス』は、もともとダスティン・ジョンソン(米国)の「ブレード型(ピン型)は操作性がいいしよくコロがるが、マレット型に比べるとショートパットがラインから外れやすい」という要望で作られたパター。ジョンソンはちょうど一年前の「トラベラーズ選手権」で『トラス』を投入すると、いきなり優勝を挙げた。実は、そのとき使っていたパターは『トラス』のプロトタイプで、ネックの三角形の大きさは初代『トラス』のそれではなく、最新『トラス』と同じなのだ。
今年の稲見の快進撃や、先週の菊地の4年ぶり優勝を演出した“三角形”パター。新たなラインナップも加わり、国内女子ツアーではよりいっそう流行の波が大きくなりそうだ。
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