<日本プロゴルフ選手権 最終日◇4日◇日光CC(栃木県)◇7236ヤード・パー71>
“トーナメントあるある”ではないが、最終組全員が優勝争いに絡むことは少ない。なぜか1人か2人、脱落するのだ。しかし、今大会は16番ホールを終了した時点で池田勇太、稲森佑貴、そしてキム・ソンヒョン(韓国)ら最終組の3人が首位タイに並ぶという珍しい展開だった。
だれが優勝してもおかしくない状況。そこに微妙な駆け引きが存在した。まず17番パー4で池田がティショットでフェアウェイをキープしながら、2打目をグリーン左に曲げてしまう。距離と風向きと雨の影響を計算したが、結果的に力が入ってしまった。「あそこでグリーンに乗せられなかった時点でありえないです」と振り返るほど、池田にとっては痛恨のミスショットとなった。ラフからのアプローチはピンを4メートルほどオーバー。それを沈め切れずにボギーを叩く。
同じホールで稲森はフェアウェイからピン4メートルにつける。「18番パー4は462ヤードと長い。雨で下が濡れていることを考えればこのホールでバーディを奪わなければ……」と考えた。しかし、無常にもカップの縁でボールが止まる。「上りのスライスでしたが、外せないと思い、ラインを意識しすぎたのが失敗でした。予想以上に手が動かなかった分、ショートしましたね」と、パーに終わる。
ソンヒョンはパーセーブし、勝負は最終18番パー4にもつれ込む。ここで稲森はフェアウェイをキープしたが、曲げたくないあまり振り切れなかったことが裏目に出る。ピンまで220ヤードも残してしまったのだ。3番ユーティリティで放たれた2打目はフェースの芯でとらえたものの、雨で濡れたフェース面の上でボールが滑り、右へ大きく曲がる。40ヤードの難しいアプローチを残した時点でパーセーブの確率は一気に低下した。
稲森のセカンドショットを見て、ソンヒョンは考えた。「フェアウェイにいっていたらピンを攻めるべきだが、パー狙いでいい。確実にピンの左サイドを狙おう」。8番アイアンで放ったボールは狙いどおりに、グリーンをとらえる。
結局、18番では池田がバーディを決め切れず、稲森もパーを拾えなかったため、確実に2パットでパーセーブしたソンヒョンがツアー初優勝を手にした。
「この試合が終わったら韓国へ帰国するつもりだったので、今季の目標だった優勝を飾れてよかったです」と笑顔を見せたソンヒョン。この勝利で5年シードを獲得したが、今季は米2部ツアーのQTを受けるという。その結果次第で、どのツアーに参加するのか決めるつもりだ。
すでにツアー3勝を挙げている金谷拓実と同い年の22歳。バランスのとれたスイングの持ち主で、ドライバーの平均飛距離は300ヤードだという。今年もまた一人、手強い韓国選手が誕生した。(文・山西英希)
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