五輪競技としてゴルフが復活した2016年。しかし当時は、1905年以来のゴルフ競技開催という以前に、多くの選手が欠場したことに注目が集まってしまった。そして、今年はコロナ禍で何人かのトップ選手が不在となっている。それぞれの決断や、状況を踏まえた上で決定した男子代表60人。その中には、五輪に強い思いをかける若手選手が名前を連ねている。
たとえば、米国のジャスティン・トーマス(28歳)、ザンダー・シャウフェレ(27歳)、コリン・モリカワ(24)の3人。スポーツ大国の中でも、ゴルフは注目される競技のひとつ。子どもたちに、よりゴルフに興味を持ってもらうため、そして母国の新スターとして名を知らしめるには、五輪は絶好の機会だ。
「オリンピックですよ」と、2020年「全米プロゴルフ選手権」、「全英オープン」チャンプのモリカワは話す。「国を代表する機会があるなんて、これ以上のことはありません」。
母国の期待に応えようというプライドは、彼らだけでなく世界各国の若手の胸の内に燃えている。16年のリオ五輪に続き、東京五輪を控えるエイブラハム・アンサーは、メキシコの何百万という若手ゴルファーの熱を高める絶好の機会だと語る。「国のために戦える機会があるなら、それを大いに楽しまなきゃ」と語る。五輪は“第5のメジャー”と言っても過言ではない。30歳のアンサーが金メダルを持ち帰れば、母国のゴルフブームは最高潮に達するだろう。
ノルウェーの23歳、ビクター・ホブランドもオリンピックに前向きだ。最高の舞台で、世界中の素晴らしいプレーヤーと戦えるまたとない機会。しかしそれ以上に、国を代表するという何にも代えがたいチャンスだ。
「ノルウェーにはオリンピックの伝統が根付いている。スポーツに熱心なノルウェー人にとっても最高だと思う。オリンピアンとして戦うことができるのは栄誉だし、ノルウェー代表として良いプレーをしたい」。
ゴルフ人口がまだ少ないチリからも、使命感をもって来日した選手がいる。22歳のホアキン・ニーマンだ。プロゴルファーが60名、アマチュアが1万5000名、そしてコースも50カ所とまだまだ発展途中のチリ。PGAツアーで優勝し、ラテンアメリカには根強いファンを持つニーマンは、「五輪は僕にとってとても重要」と語っている。
「チリのメディアも五輪にとても注目している。金メダルを懸けてプレーすることができるのは最高だ。チリで金メダルを取った選手はこれまで多くはいないから、名誉になるだろう」。
実際、チリが金メダルを獲得したのは40回のオリンピックで4つのみ。ニーマンの活躍が、母国に大きな影響を与えることがわかるだろう。
「母国を代表することが夢だった」と、ゴルフバッグにはチリの国旗の刺しゅう。「ようやくオリンピックを迎えて、最高の気分だ」と笑う。
世界ランクトップ選手の不在に、落胆したファンも多いだろう。しかし、国の威信やプライドをかけて乗り込んできた若手たちが、霞ヶ関カンツリー倶楽部を大いににぎわせてくれるに違いない。
文・ジム・マッカービー
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