今週19日(木)から4日間行われる今年最後の海外女子メジャー「AIG女子オープン」(全英)。今年は7名の日本勢が栄冠に挑む戦いを前に、渋野日向子にとってディフェンディング大会となった昨年を振り返りたい。
2019年に海外メジャーはおろか、米ツアー自体初出場ながら見事全英タイトルをつかんでから1年。世界は新型コロナウイルスの猛威にさらされ、マスターズをはじめ様々なメジャーが延期となった。幸い「AIG女子オープン」は延期とはならなかったが、世界ランキング1位のコ・ジンヨン(韓国)をはじめ世界トップ10のうち4人が欠場する事態となった。
そんななかでも、ディフェンディングチャンピオンは渡英を決断した。さらに前週の「アバディーン・スタンダード・インベストメンツ・スコットランド女子オープン」もプレー。ぶっつけで出場した19年とは異なり、前哨戦から英国で戦った。
海外メジャー初挑戦でいきなり優勝し、さらにその笑顔でギャラリーを盛り上げながらプレーした“スマイルシンデレラ”の帰還に対し、大会の期待も大きかった。プロモーションビデオには、締めの選手として登場。さらに“ディフェンディングチャンピオン専用”の駐車場がお出迎えし、会場の至るところには渋野の写真が飾られた。
しかし、そんな期待とは裏腹に成績は伴わなかった。初日はバンカーから2度アゴに当てる悪神殿となど、3バーディ・5ボギー・1トリプルボギーの「76」。71位タイと出遅れると、巻き返しを狙った2日目もスコアを7つ落として105位タイで予選落ちを喫した。
「ショットがポンコツでした。きょうのスコアは自分の責任。風がどうこうという問題ではない。これからも(歴代優勝者として)名前は残っていくのでクヨクヨしていられない。もっと頑張って練習しないといけない」。こんな言葉を残して英国を後にした。
そして渋野にかわって、日本勢として気を吐いたのが上田桃子だった。コロナ禍での渡英には不安も感じていたが、「熊本の人に挑戦している姿を見せたい」と集中豪雨で被災した地元を勇気づけるべく海を渡った34歳が、火の国の女の強さを見せつけた。
予選通過は52位タイと決して上位とはいえなかったが、3日目に「68」で19位タイまで浮上。さらに最終日に4日間のベストとなる「67」をマークして、海外メジャーでのキャリアハイとなる6位でフィニッシュした。「やっと終わった(笑)。充実感もあったけどタフな4日間でした」。疲労感と充実感をにじませつつ、「リスクをとる決断は何が正解は分からないなかで、自分自身としては良かったなと思います」と故郷のみならず日本に吉報を届けた。
そんな戦いでは、渋野に続く新たなシンデレラストーリーが生まれた。その主役になったのがドイツのソフィア・ポポフだ。出場時27歳だったポポフは、ツアー未勝利どころか主戦場は米国の下部ツアーで、世界ランキングも当時304位(渋野は46位)。2週前の「マラソン・クラシック」で9位に入り、ギリギリ出場にこぎつけた選手だった。
その前週は米アリゾナ州で開催された下部ツアーに出場。そして「私は誰に何と言われようと自分のスケジュールを貫くだけ」と強行日程で、全英の会場に入った。すると、3日目に「67」を叩き出し首位に立つと、ジャスミン・スワンナプーラ(タイ)の追撃を振り切って見事優勝。再び全英からサプライズニュースが生まれることになった。「過去6年間、苦労したことはたくさんあった。やめたいと思ったこともあったけど、それらを克服できてうれしい」。つらい時期を乗り越えてつかんだ栄冠だった。
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