<長嶋茂雄INVITATIONALセガサミーカップ 最終日◇22日◇ザ・ノースカントリーゴルフクラブ(北海道)◇7178ヤード・パー72>
「マイクを握ると緊張しちゃって…」と、優勝スピーチで大きく深呼吸。バーディを獲ってもボギーを打っても表情を変えない26歳が、優勝トロフィーを手にようやく満面の笑みを見せた。
2打差から上井邦裕を追いかける立場だったが、焦りも邪念もない。初優勝から丸2年。その間に優勝するチャンスも何度かあったが、「追いかける立場から伸ばせなくて、色々と反省した」と、技術面でも精神面でもとことん自分と向き合った。
「自分はできると自信があった。とにかくトータル20アンダーを目指して、それでも勝てなかったら仕方が無い」と、淡々と自分のプレーを続けていった。6番からの2連続バーディで上井を抜いてトップに立つと、13番からの3連続バーディで3打差をつけた。「15番は、全部完璧でイメージ通りの理想のバーディ」と、フェアウェイからの2打目を1メートルにピタリとつけたが、ここでも表情を変えることはない。目標のトータル20アンダーでフィニッシュし、逆転でツアー2勝目を決めた。
意識していたわけではなかったが、トータル20アンダーは13年の薗田峻輔、19年の石川遼に並ぶ大会レコード。「知っていたら、もう1個バーディ獲りたかったですね。聞かなければよかった!」。優勝と目標スコアの達成はうれしいが、記録更新を逃したことはまた別問題。コースを降りれば冗談好きで、負けん気の強い26歳の素顔をのぞかせる。
「北海道に来るとワクワクします。今回はコロナで(食事は)コンビニでしたけど、おいしいものが食べられるし(笑)」と表情を崩して語る北の大地は、プロトーナメントデビューを飾った思い出の地でもある。アマチュア時代の2011年、予選会を通って始めて出場したのが「ANAオープン」だった。当時は予選落ちに終わったが、10年が経った今、ゆかりの地でツアー2勝目を勝ち取った。
あすは一度自宅に戻り、「一番喜んでくれると思う」と、昨年入籍したばかりの妻と喜びを分かち合い、次戦はいよいよディフェンディング大会の「Sansan KBCオーガスタ」に挑む。「これからは国内メジャーでも勝ちたいし、賞金王も目指したい。ボクが賞金王を獲ったら、夢があると思いませんか?」。身長158センチの王者は、そう言って勝気に笑ってみせた。(文・谷口愛純)
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