昨年9月に開幕してからのこの1年、これほど話題を振りまいた選手は他にいるだろうか?
ブライソン・デシャンボー(米国)、27歳。コロナ禍でツアーが中断された2020年の3ヶ月にはトレーニング強化で20パウンド(約9キロ)の増量、徹底的なスイングスピードの追求で飛距離360ヤードを超えた。良くも悪くも今季は常に話題の中心にいたと言ってもいいだろう。
9月、開幕直後に開催された「全米オープン」、舞台はニューヨーク州のウイングドフットGCで初のメジャー制覇。「自分の追求してきたことが間違いではなかった。これはゴルフの革命だ」と涙した。
このデシャンボーの勝利は「ゴルフ界の未来を変えるかもしれない」と騒がれ、大きな影響をもたらした。多くの選手がトレーニング強化を図り、飛距離を求めた。実際にローリー・マキロイ(北アイルランド)は「デシャンボーの影響でスピードを求めてしまった。その結果、スイングを失った」とのちに吐露している。
飛距離の伸びはゴルフ界の大きな問題でもある一方で、ゴルフファンを魅了するファクターであることは間違いない。今季2勝目となった3月の「アーノルド・パーマー招待」では池を取り囲んだ6番パー5で、池越えでショートカットのティショットに挑戦。第3ラウンドで370ヤード飛ばして成功すると集まったファンは大歓声をあげ、デシャンボーは両手で大きくガッツポーズを作り大いに沸かせた。
「ものすごく興奮した。試合に勝った気分だ」と高揚したが、第4ラウンドには377ヤードを飛ばし、その言葉通りに大会も制覇した。
翌週の「ザ・プレーヤーズ選手権」では3位に入ったが、その後は低迷。マスターズ46位、「全米プロゴルフ選手権」は38位、連覇を目指した「全米オープン」も26位だった。「全英オープン」を33位で終えて、いよいよ東京五輪!というところでまさかの新型コロナウイルス感染、五輪欠場という残念な事態に陥った。
コロナによる欠場で10パウンド(約4.5キロ)の体重減、スイングスピードも時速5マイル落ちたという。
それでも復帰戦となった「WGC-フェデックスセントジュード」で8位、プレーオフシリーズ2戦目の「BMW選手権」ではパトリック・キャントレー(米国)との6ホールに及ぶプレーオフを戦ったが敗れた。
プレー以外でも話題は多かった。ブルックス・ケプカ(米国)との確執が取り沙汰される中、心ないファンから「ブルックシー!」と野次を飛ばされることもしばしば。ついに最終戦では「ブルックシー!」と叫んだ観客は退場にするとジェイ・モナハン会長がルールを作った。またコロナ感染したがワクチン接種をしていなかったことを「後悔していない」という発言をしたことがメディアに取り上げられるとSNSで炎上、以来、大会期間中に放映局のTVインタビューは受けるが記者の取材には応じない、という状態が続いている。
世界ランキング7位、ゴルフ界を代表するスターのひとりとなったデシャンボー。2週後には欧州チームと戦う「ライダーカップ」も待っているから、今後の動向にも注目だ。(文・武川玲子=米国在住)
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