<マイナビABCチャンピオンシップ 2日目◇5日◇ABCゴルフ倶楽部(兵庫県)◇7217ヤード・パー72>
片山晋呉にとって、このABCゴルフ倶楽部はとても相性がいい。これまで21回の出場で4勝を含むトップ10は11回を数え、棄権は1度あるものの予選落ちはなし。完全にコースを知り尽くしている。やはり今年もシンゴが来た。予選2日間を終えた時点でトータル7アンダーは、首位と2打差の7位タイの好位置につけている。
なぜ片山はABCで強いのか。「技術がいるし、飛ぶだけだったらっていう感じでもない。グリーンの速さもそうだし、ピンの位置もけっこう厳しい。そういう意味ではすごく経験と技術がいるし、足りないのは若さだけですね」と笑う。
片山は今年48歳になったが、スイング改造や体づくり、ギアへのこだわりもあってドライバーの飛距離は落ちていない。「初めて賞金王になった21年前と平均飛距離が一緒なんですよ。その頃で僕は20位から30位のあいだだったけど、いまはまったく同じ飛距離で自動的に60位。(順位で見ると)落ちていると思っちゃうけど、ABCみたいな昔からやっているコースでは飛距離は変わってない。20何年もやって落ちてないのは、すごいことだろうなって思うようにしています」と胸を張る。
ツアーで計測しているドライビングディスタンスは、ドライバーを使わないホールでも計測されることが前提にはなるが、片山が初めて賞金王になった2000年のドライビングディスタンスは269.78ヤードで、今季は279.03ヤード。飛距離はむしろ10ヤード伸びている。ツアー全体を見ると、21年前は平均で300ヤード飛ばす選手は1人もいなかったが、今季は現時点で10人もいるのだ。
飛距離では若い選手たちには勝てない。しかし、「中日クラウンズ(6位タイ)とか日本プロ(4位タイ)もそうだったし、ちょっとせばめられて、グリーンが難しくなったら、チャンスが出てくると思っていた。やっぱり2つともハマっているし、ここも自動的にこういう位置に来られる。本当に合うところ(コース)が見つかれば、まだ大丈夫かなと思っています」と考えている。そして今後は、コースを絞って出場する試合を選ぶ可能性もあるという。
片山は今シーズン、1800万円余りを稼いで賞金ランキング44位。24季連続の賞金シードは確定させているものの、4度賞金王に輝いた実績を考えると、少しもの足りない数字にも見える。ところが「そうなんですか? 全然気にしてないんですよね」と意外な答えが返ってきた。
「賞金シードの金額までいっていたらって考えるけど、それは大丈夫でしょ? 賞金ランキングで常に上位って気持ちはない。もうあんまり自分を追い込まないです。合っているコースで優勝争いができたらいいなと思ってやらないときつい」
この囲み取材の前、片山は15分だけパッティング練習をしてから14時頃に会見場に現れた。「昔だったら16時くらいまであと2時間練習できるなって考えていた。その気持ちはもうないもん」と、年を重ねて試合でのルーティンも変化している。
そんな片山はプライベートでもやりとりがある1学年上の新庄剛志新監督の就任会見で大きな刺激を受けた。「会見はきのうの夕方見ました。サイッコウでしょ。若い選手のなかには感化されて開花する人が出てくるでしょうね。埋もれているすごい選手を発掘しそうな気はします。それが楽しみ」。
新庄監督が選手時代からファンを喜ばせようと様々なパフォーマンスを行ってきたように、片山自身もテンガロンハットをかぶったり、派手なアクションでトーナメントを盛り上げようとしてきた。それについては「目立つとその分いろんなことをしないといけないし、(成績が)落ちたらいろいろ言われるし、本当にそうだなってわかる」としみじみいう。片山もゴルフを盛り上げたいという気持ちは失っていない。
「(同世代の)野球選手がどんどんいなくなって、同世代が監督になってくるわけじゃないですか。この体で48歳までできていることが奇跡みたいなもの。ゴルフというスポーツだけはまだ20代の子たちと戦える、まだ自分がそのフィールドにいられるっていうことは、すごく誇りかなと思っています。幸せですよ」。喜びをかみしめながら、50回目の記念大会を迎えた得意コースで、大会5勝目を目指す。(文・下村耕平)
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