ゴルフメーカーは、優秀なアマチュアゴルファーに対し『個人モニター制度』により用具の無償供与をする。この時の繋がりによって将来プロになったときに自社との契約に繋げるわけだが、当然、この目論見がすべてうまく運ぶわけではない。中には期待通りの成長を遂げられず、なかなか試合に出られない選手もいる。このとき、メーカーはサポートの終了という決断をするわけだが、どういった経緯を踏んで打ち切りとなるのかを、ブリヂストンスポーツのアマチュア担当者に聞いた。すると、モニター終了に至るまでのモラトリアム期間に、かなりの男女格差があることが分かった。
「当社に関して言えば、以前は男子が圧倒的に多かったのですが、近年、女子がかなり増えてきており、まだ男子が若干多いものの、ほぼ均等になりつつあります」(アマチュアゴルフ担当:以下同)
これほど女子プロ人気が隆盛で男子プロ不人気が続く状況がある中で、未だに男子のモニター選手が多いというのはいかなる事情があるのだろうか。
「まず、男子に比べ身体的に早熟な女子は、総じてプロデビューが早い傾向にあります。また、女子は高校を卒業してプロテストを受けて合格しなかったら、早い段階でプロになることを諦めてしまう選手も多いんです。基本的に女子はプロテストを通らないとツアーの試合に出られない制度になった事情もあるので、その傾向は強いですね。その点男子は、まず大学に行って実力をつけて、プロテストやQTの成績がよくない場合でも、ゴルフ場の研修生になるなどして再挑戦を続ける期間が長い。それがサポート人数やサポート期間の男女差に繋がっています」
男子の場合、QTのセカンドステージ通過者はツアープレーヤーとして認められ、プロを名乗れるが、試合に出られなければプロ契約をしているメーカー側のメリットは少ない。そのモニター解除に至るまでのモラトリアム期間だが。
「一応、男女とも学校を卒業して少なくとも数年はサポートを継続しながら状況を見るようにしています。(一定期間を過ぎて)その後も継続するかどうかは、そのあいだの実績やその時点でも将来性などを鑑みて、その都度サポート期間を検討するということになります。そして、もし我々が実力を認めた選手に関しては、男子の場合、30歳くらいまではサポートを継続します。女子はプロテスト次第なので、選手自身がプロを諦め、サポートを辞退するケースが少なくありません」
前述のとおり、女子はプロ入りを断念する判断が早いのに対し、男子は『一生の仕事』と捉えている側面があるので、なかなか挑戦を諦められないという傾向がある。ただ、企業側としても永遠にサポートをすることはできない。いつかはサポートの終了を言い渡すときがくる。
「正式な決まりはないのですが、でも一応、何年もQTでファーストやセカンドしか通らない状態が続いていたら、『サポートの継続が難しくなってくる』という話をします。中にはそれで本人が『もうやめます』という選手もいますが、それでも諦め切れない人には『申し訳ないけれど…』という話をします」
ブリヂストンスポーツは、2013〜14年頃に契約プロをかなり解約したことがあった。そのときの反省から、プロもモニターも、できるだけ関係を長く続けたいという気持ちがあるという。ブリヂストンでは契約をする時に必ず『ブリヂストンが好きですか』という問いかけをするという。契約解除の話をしたときに、「今までありがとうございました、これからもブリヂストンのボールやクラブを買って使いたいと思っています」と言われると、担当者は申し訳ないと思うとともに、その選手を選んで良かったと思うのだろう。(取材・文 / 古屋雅章)
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