快晴の最終日、美しいペブルビーチ・ゴルフリンクスでは、7人が少なくとも1度はトップに立つという大混戦だった。「AT&Tペブルビーチ・プロアマ」で、ファンの一番人気のジョーダン・スピース(米国)を追いかけたトム・ホージ(米国)は上がり5ホールで3つのバーディ、終盤にスピースを逆転し、ついにツアー初優勝を挙げた。
太平洋から波が打ち付ける18番パー5、1メートルのパーパットをしっかり沈めてトータル19アンダーで先にホールアウト。2打差を追う最終組のボウ・ホスラー(米国)のバンカーショットの第3打がカップを通り過ぎるとホージの勝利が決定。アテストを終えたばかりのホージはケリー夫人と抱き合った。
サンデーバックナインは、一時はスピースが2打リード。ところが、ホージの流れを変えたのは16番パー4の第2打だった。残り141ヤードからショットはピン右に落ちるとスピンでカップに向かったが、わずか数センチ手前でストップ、しかしタップインバーディでスピースを捉えた。1つ前を行くスピースのプレーは、ホージの目には「はっきりと見えていた」。明暗を分けたのは17番パー3。スピースが1.5メートルを外してボギーにしたのに、対しホージは6メートル強をねじ込みバーディ。2打リードで18番を迎え逃げきった。
32歳、ノースダコタ出身のホージは2011年にプロ転向、自身のキャリアはカナディアンツアーから始まった。初出場した「プレーヤーズカップ」で勝利、それがホージにとって最後の優勝だった。
コーンフェリー・ツアーを経て14〜15年シーズンからPGA ツアーでプレー、それから202大会を戦い2位は2回。その1回はわずか2週前、「ザ・アメリカンエクスプレス」(1月20〜23日・米カリフォルニア州)だった。
実は昨年の今大会でホージはスピースとともに最終日、最終組でプレーしている。18番パー5ではホージの打ったショットがフェアウェイ右の、このホールもシンボルでもある杉の木に引っかかり落ちて来なかった。「ジョーダンのキャディが木に登って探してくれた。今年はティショットをハイブリッドで打ってあの木の後ろだった」と昨年のシーンが蘇った。今年は杉の木をしっかり超えてレイアップしたが「あの木を誰か切ってくれても僕は構わない」と笑った。
「長い間勝っていなかったから、どうやって喜べばいいか分からない」と苦笑。しかし、この勝利で「マスターズ」の初出場も獲得した。「まだオーガスタまで気持ちが届いていないが、2週前の2位で世界ランキングも64位までアップしたから、きっとチャンスがあると思っていた。マスターズ出場も優勝の祝い方も、これからゆっくりと考えたい」と最後は穏やかな笑みで勝利を喜んだ。(文・武川玲子=米国在住)
<ゴルフ情報ALBA.Net>