50歳以上のレジェンドが集まる国内シニアツアー。昨年の賞金王で“シニアの顔”である篠崎紀夫は、独特のゴルフ観や練習法で強さを発揮する。身長162センチの篠崎は、180センチを超えるシニアプロを相手にも負けていない。体格的な不利を正確性でカバーしている。(取材/文・山西英希)
■インパクトゾーンを長くして方向性を上げる
シニアプロといえども180センチを超える大柄な選手はいる。背が高い人や腕が長い人と比べると、小柄な篠崎紀夫はどうしてもスイングアークが小さくなり、生み出されるパワーは劣ることになる。ただ、パワーで劣っても正確性があれば十分に戦えるのがゴルフである。
ショットの精度を上げるために篠崎は、インパクトゾーンが短くならないように気をつけたという。「インパクトゾーンが短いと、どうしてもスイングの中の点でボールを打つことになりますからね。インパクトゾーンが長ければ、線でボールを打てる分、方向性がアップします」とその理由を語る。
インパクトゾーンを長くするために、篠崎が行っているのは、ダウンスイングからインパクト、フォロースルーにかけて、ヒザを目標方向に送る動きだ。右ヒザを前(ボール側)に出さずに、左ヒザに寄せるように動かすことでターゲットラインと平行に動かしている。同時に左ヒザも平行に動くので、自然とインパクトゾーンも長くなるというわけだ。
「ヒザの動きを利用してボールをクラブヘッドで低く長く押していくイメージです」。このとき、上体はできるだけ正面を向けたままにしておくという。
■インパクトで右足が上がらない“ベタ足”感覚のスイング
ヒザの送りを気にしながらクラブを振るうちに、いつの間にかインパクト時でも右足が上がらない、ベタ足になったという。「バックスイングでも左足のカカトを浮かせませんし、ダウンスイング以降に右足カカトを浮かせることもしません。本当はタイガー・ウッズのように、どちらのカカトも浮くぐらいフットワークを使いたいんですけどね(笑)」と本音を明かす。
それでもヒールアップしたときよりもベタ足で打ったときのほうが、ミート率が高い分思ったほど飛距離が落ちることはないという。
また、ヒザの送りによって下半身の粘りが生まれたことにより、ダウンスイングではクラブをインサイドから下ろし、スイングプレーンに沿って振り切れるようにもなった。「ダウンスイングで右ヒザが前に出ると、アウトサイドに振り抜いてしまうので、スイングプレーンから外れてしまいますからね」と、右ヒザが前に出る動きはNGになっている。
飛距離を求めるあまり体を大きく使いすぎると、その分ミート率も下がり、曲がる確率も高くなる。あくまでも方向性重視という自分のゴルフを一貫して守ってきたことが、篠崎がシニアツアーになっても結果を残せる理由だろう。
■篠崎紀夫
しのざき・のりお/1969年10月24日生まれ、千葉県出身。身長162センチ、体重67キロ。92年プロ転向。プロ16年目の2007年「ANAオープン」でツアー初優勝。賞金シードは4シーズン手にしたが13年が最後。19年にシニア入りし、2年目の20年「マルハンカップ太平洋クラブシニア」でシニア初優勝を遂げるなど賞金ランキング2位に入る。21年は年間3勝を挙げてシニア賞金王となった。レギュラーツアー通算1勝、シニアツアー通算4勝。北谷津ゴルフガーデン所属。
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