3打差9位で迎えた最終日、ジョーダン・スピース(米国)の気持ちは落ち着いていた。
前日の第3ラウンドの最終ホール、18番パー4でわずか40センチ、タップインのパーパットを外してボギー、「あのミスにものすごく怒っていた。試合であれほど怒ったのは初めてだった」とスピースは振り返った。がそんなスピースに前夜、アニー夫人が「5秒待って」と話したという。
「アニーは僕のゴルフに何か言ったことはなかった。でも昨夜、パットを外したあと、次のタップインには5秒待つようにいった。その言葉をきょうは考えていた」とスピース。
その結果、「最終日は絶対にパットをショートさせてない。アグレッシブに攻めて行く」と誓ってスタート、2番パー5ではグリーン右サイドのバンカーからの第3打がカップイン、イーグル、さらに5番パー5は残り254ヤードから7メートルに2オン、これを沈めて2つめのイーグルを奪うとあっという間にトップに立った。
大西洋からの強風が吹きスコアが上位陣もスコアメイクに苦戦する中、8番パー4は4.5m、9番、11番とボギーにしたが13番パー4で3.5m、最終18番パー4は3mを沈めて「66」をマーク、トータル13アンダーのクラブハウスリーダーでプレーを終えた。
「勝利するには色々な条件が必要。プレーに運も必要だし、他の選手のヘルプも時には必要だ」
結果は13アンダーで並んだキャントレーとのプレーオフ。1ホール目の18番パー4は強風で風の計算が難しく揃ってグリーン手前のバンカーへ。しかし6番アイアンで打ったスピースはクリーンなライ、一方9番アイアンだったキャントレーは目玉。20センチに寄せたスピースに対し、キャントレーはピンを大きくオーバー、パーをセーブしたスピースが勝利を掴んだ。
「正直、きょうの勝利には僕も驚いている」とスピース。前週は大得意のはずのマスターズ・トーナメントでまさかの予選落ち、そのオーガスタの速いグリーンから「今週はスピードをアジャストするのに苦労した」と言うなかで見事な修正だった。
勝利したスピースを待っていたのは昨年11月に生まれた長男サミー君を抱えたアニー夫人だった。
「今週はパッティングがひどく、こんなひどいパッティングで勝った試合は初めて。だけどアニーのお陰で最終日は本当に落ち着いてプレーできた」
ツアー通算13勝目、パパになっての初勝利は格別なものになった。(文・武川玲子=米国在住)
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