<KKT杯バンテリンレディス 最終日◇17日◇熊本空港カントリークラブ(熊本県)◇6499ヤード・パー72>
勝てそうで勝てない日々が続いていた植竹希望がついに勝利を手にした。ツアー最長の2時間という、6ホールにも及ぶプレーオフのすえにつかんだ初優勝だった。
ロングシーズンとなった昨季は、レギュラーツアーとステップ・アップ・ツアーの両方に参戦しステップの開幕戦で優勝。レギュラーではトップ10入りが7回と優勝を予感させる戦いを続けた。迎えた今季、2戦目に2位タイに入るなどたびたび優勝争いに絡み、今大会で初の美酒に酔った。
2017年のプロテストに合格。1998年度生まれの黄金世代の一人として注目を浴びるようになったのは、ちょうど2年前のコロナ禍、ステップに勝ったころからだ。キレ味の鋭いスイングから放たれるショットは男子プロを彷彿(ほうふつ)とさせるほど力強い。そのため、解説者や先輩プロにも植竹ファンは多い。
永久シードの森口祐子もその一人だ。今大会の2日目を終えた夜、植竹に森口からメッセージが届いた。「内容としては、他人のゴルフは変えることができないから、自分のことに集中しなさいと言われました」と、優勝争いの心構えを授かった。
単独2位でスタートした植竹はその教えを守り、最後まで自分のゴルフに徹した。質の高いショット。今回最も活躍してくれたというパッティングを武器に、しぶといゴルフを続けプレーオフに進んだ。最後は吉田優利との一騎打ちとなった中でも、自分に徹する姿勢を崩さなかった。
森口は植竹のキャディに「私は植竹さんのストーカーだから」と冗談交じりに話していたという。それだけ植竹のゴルフに魅了され、優勝を期待していた証拠だろう。
畑岡奈紗、渋野日向子、勝みなみ、小祝さくら、原英莉花、大里桃子、新垣比菜、河本結、淺井咲希。19年8月の淺井以来、黄金世代の初優勝は出ていなかったが、ついに植竹がここに名前を加えた。勝利を決めた瞬間はその淺井、小祝、大里が駆けつけ祝福し、植竹は子どものように泣きじゃくった。
プロ入りから6年目。“黄金世代の雑草”だった植竹が、ようやく一輪の花を咲かせた。(文・高桑均)
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